Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

知らない相手だからこそ伝えられるものがあるはず

クリスマスイヴイヴに『ボブという名の猫』を見て以来、感動作を見漁っている。こちらの作品は、この2,3日寝る前にちょっとずつ見ている、いかにも感動できそうな1作。

差出人の分からない手紙を受け取った女子高生と無作為に手紙を書く老人の物語。主人公は、手紙をくれた人は自分のことを理解してくれている身内だと思っていた。しかし、家族や友達に聞いても差出人を知る人はいない。郵便局員の協力(情報漏洩?)もあり、手紙の送り主は老後施設に住む男性であることを突き止める。あっさりと会えるんだと意外に思いながら、女子高生と老人は距離を縮めていく。

手紙の送り主は、主人公を良く知る「あしながおじさん」的な存在で、最後まで2人が出会うことはないと考えていた。また、手紙の送り主と初めて会った時の「君のことなど知らない」発言に違和感を覚えた。自分の目には、誰彼かまわず手紙を送りつけるという迷惑行為にしか映らなかったのだ。最初は傲慢な老害に映ったが、持ち前の巧みな言葉を駆使して、2人はソウルメイトになる流れに。老人に女子高生が言いくるめられているだけじゃないかと思ったが、全く知らないから誰かだからこそ救われることもあるかもしれないと、新たな視点を見出した。

フォレストガンプ』でも、主人公は面識のない隣に座るナースに自身の半生を語る。知的障害を抱えているからあのような行動をとったと取ることもできるが、日常世界でもあれに似た現象に出会うことがある。特に、老人と子供は、ほぼ初対面の相手にも身の上話をする傾向が強い。いつか忘れたが、道端で倒れかけたお婆さんを手伝ったことがある。買い物帰りだったようで、買い物袋を重そうに下げていた。「いいよ」と言う相手を制して、約20分先の自宅までお付き合いさせてもらった。歩き始めた時は、どんなことを話せばいいのか頭をフル回転させていた。そんな自分をよそに、彼女は一人で住んでいること、旦那さんとは10年前に死別したこと、今日どんなものを作る予定なのか、などを話し始めた。いつも一人で過ごしているから話し相手が嬉しかったのだろう、孫や趣味、どんな最期を迎えたいか、などかなりプライベートな話も聞かせてくれた。その時話してくれたのは、相手が初対面だったらだと思う。きっとたまに顔を見せに来るであろう家族や役所の人には話せないこともあったと思う。そして、不思議なことに、自分も誰にも話さない悩みを打ち明けていた。誰かに打ち明けるのが苦手な自分が、あまりに抵抗なく話していたので驚いた。それも、相手が初対面のおばあさんだったからで、日常的にコミュニケーションを交わす相手に感じる恥や気遣いなどのストッパーがなかったからだろう。

そんな記憶を思い出した時には、見ず知らずの相手に手紙を送るおじさんの見方が変わった。確かに、一方的に耳障りの良い言葉を届けるのは傲慢かもしれない。ショッピング中のエスカレーターや散歩中の公園で突然手紙を手渡されたら気持ち悪いと思う。映画の中では、どの人も気味悪がってはいたが受け取っていた。実際にやろうと思ったら、はねつけられることもあるだろう。特に、初対面に対して強い警戒心を示す日本人の場合は特に。

人には、誰かを幸せにする才能がある。自分にどんな才能があるかは、心が知っている。心が語りかけるものを、やり続けること。やり続ければ、いずれマスターすることができる。そう、言葉を届ける才能を持つおじさんは教えてくれる。心が語り掛けてくれたか自信はないが、書くことが自分の才能だと信じている。自分の書いたもので誰かを幸せにできたと感じることはまだ少ない。たまたまその気になって書いた母親宛ての手紙や前職に課のメンバーと回していた交換日記、毎回のように言ってくれるブログ友達。振り返ってみると、自分は書くことで周りの人を幸せにできているのかもしれない。ずっとこんなお気楽なことばかりしていられないが、これからも書くことは続けていたい。幸せにできる誰かがいると信じて。