Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

なぜ、「マイナス金利」に怯えてしまうのか。

「マイナス金利」と聞くと、銀行に預けるとお金を取られてしまう悪い状況と考えてきた。しかし、それは妄念であって、いかにマスコミ的な思想に染まってきたのかが分かる。消費者という「半径1メートルの視点」でものを考えているうちは、マイナス金利の真実を理解することはできない。そう説いているのが、こちらの本だ。

本書は、「俗論」と「真相」が小見出しになっており、世間で信じられている俗説と真実の両方を分かりやすく解説してくれている。内容理解の確認もかねて、俗論に対する「真相」を自分なりの言葉で書いていこうと思う。

個人の預金金利もマイナスになる

冒頭にも書いたが、「マイナス金利」をネガティブに考える最も典型的な例。「金利=銀行に預けていた時にもらえるお金」だから、その率がマイナスになると、銀行に預けているだけでお金が減るのではないかと不安になる。しかし、「マイナス金利」が射す金利とは、金融機関が日銀に預けているお金の話。中央銀行である日銀には、「銀行の銀行」という役割があり、一般の銀行は一般人のように、日銀にお金を預けたりお金を借りたりしている。日銀に預けておくとお金が減る状況になったら、一般の銀行はどうするか。日銀に預けているお金を引き出して自分たちでお金を持つ。銀行が自ら持つお金が増えると、企業や民間にお金を貸したり、自分たちで運用したりする。そうすると、より多くのお金が世の中に出回るようになる。量が増えると価値が下がるので、お金の価値が下がりモノの値段が上がる「インフレ」になる。「マイナス金利」の目的は、物価を上げること。つまり、お金がたくさん出回って相対的にモノの価値が上がる「インフレ」にすること。「マイナス金利」は、決して一般人の資産を減らす政策ではない。

マイナス金利は個人にも負担がかかる

「マイナス金利=資産が減る」というイメージがつきまとう。しかし、先ほども書いたがマイナス金利になっても、銀行預金が減るわけでもないし、現金の価値が極端に下がるわけでもない。次に、支出は増えるのではないかと心配する人が出てくる。しかし、これも妄念。例えば、住宅ローンを固定金利制で払っている人がいるとする。固定なので金利の変動に関係なく、毎月決まった額を返すことになる。このように借金をしている人からすれば、利率がマイナスである状況は好ましい。なぜなら、毎月支払う利息分が減るからだ。5%よりも3%、3%よりも1%の方が、支払う金額が減ることは小学生でもわかる。つまり、借金をしている人にとっては、マイナス金利は借金額を減らせるチャンス。ローンの借り換えには手数料がかかることや年数やローン残高によって、一概に借金が減るとは言えないが、今ではネットで簡単にシミュレーションができる。毎月の借金返済をぼやく暇があれば、少しでも負担が減る機会を見つけてみてもいいかもしれない。

金利が低すぎて個人の資産運用にも支障が出る

資産運用法はいろいろあるが、このように心配する人は金利に応じた金融商品に投資をしている人だろう。典型的なのが、国債を買っている人。個人向け国債は、年に2回金利に応じた利息がもらえる。金利がマイナスだともらえるどころか取られてしまう、と心配するのが普通。しかし、金融機関が売っているものも財務省が出している国債も、最低利息というのが設けられている。金融機関のだと0.01%、財務省のだと0.05%。つまり、どんなに金利が下がったとしても元本×0.05%は増えていくということ。それに、マイナス金利下では将来的に金利が上昇することが期待できる。毎回(年に2回)最低限の金利が約束されている+金利の上昇に応じて利息が増える「変動10」という金融商品がある。財務省が出しているもので、金利上昇リスクに備えるのにはもってこいだ。

マイナス金利で年金が破綻する

マイナス金利になると、国債の利息がマイナスになる。だから、国債を大量に保有する年金機構は資産を大きな損を抱え、最悪破綻してしまうのではないかという不安。マイナス金利国債の利息がマイナスになる、というのは真実。しかし、利息が下がることは、国債価格が上がることを意味する。国債の価値は上がっているのだ。つまり、年金が国債で運用されていれば、含み益を生むことになる。新規で購入する国債については利回りが落ちた状態なので、買っても資産を減らすことになるかもしれない。しかし、年金は長期運用が基本なので、短期的な金利の変動によって資産が減ることはない。

国債暴落の可能性が高まった

先ほども書いたように、金利の低下は国債の価格の上昇を意味する。価値は上がっているのだから、全く変われない状態である暴落とは正反対。利回りは、(1年間に得られる利息÷保有額)で求められる。1年間に得られる利息が減る、もしくは保有額が増える、またはその両方が利回りの低下を意味する。マイナス金利の状況では、銀行に預金しても意味がないので金融投資が活発になる。国債へのニーズが増えると、価格が上昇する。暴落とは全然違う。

インフレ目標が達成できなければ日銀総裁は辞任すべし

景気が良くならないと時に非難されるのは、総理大臣と日銀総裁。実際に、2022年は一年通して岸田総理と黒田総裁を叩く空気が流れていた。日銀が行う金融政策の良しあしを測る指標としてよく出てくる「インフレ率」。物価上昇率とも呼ばれ、全商品の前月に比べてどれくらい上がったのかを示す数字。日本は、世界に倣ってインフレ率2%を目標に掲げている。黒田さんが日銀にトップになってから数年間、2%の目標を達成できないでいた。マスコミはそのことを中心に非難する世論を作っていた。しかし、インフレ率はあくまで指標であり、景気の動向を示す絶対的な目標ではない。事実、2022年後半に2%を達成したのちも、黒田総裁や岸田政権を非難する声は止まらなかった。大切なのは、景気が良いと感じるかどうか。物価が上がらなくても、失業率が低くみんながご飯を食べていけている状態であれば問題ない。物価指数は頻出の数字だが、それだけを政治や経済の判断材料にしてはいけない。

インフレ目標が達成された後はハイパーインフレになる

まず、ハイバーインフレは早々起こるようなものではない。前月に比べて数万%の上昇率で物価が上がる状態を指す状態を指し、そんな異常事態が簡単に起こっていたら今よりもっと高頻度に世界の国々は滅亡している。インフレやデフレなどの物価は、お金の量を調整することが可能。お金をいっぱい刷る金融緩和をすれば物価は上がるし、国債を売りまくれば世の中からお金は減り物価は下がる。また、インフレ目標を達成したのちハイバーインフレになった国は過去どこにもない。先ほども言ったように、インフレ値は一つの指標に過ぎない。物価上昇率で将来が決まると思い込んでいる人たちは、経済を複合的に見る視点が欠けていると言える。

「インフレ期待」が起こると日銀のバランスシートが悪化する

インフレ期待とは、物価が上昇し続けていくだろうことが予想される状況。物価が上昇するとお金の価値が下がる。それは金融商品でも同じで、それまで金融緩和で大量に国債を買っていた日銀の資産が減るだろうという予想。確かに、そうした状況では日銀は国債の含み損を抱えることになるだろう。しかし、日銀には約100兆円ほどの現金を持っている。国債として持っている資産よりもずっと多い現金を持っているので、国債の下落による資産状況が悪化することはない。そして、日銀が買う国債は政府が売っているもの。日銀と政府は、財布を別にする夫婦のようなもので、買い手の日銀が損をしても売り手の政府が得をする。同様の理屈で、「政府は1000兆円を超える借金があり、将来への負担が増える一方だ」という言説も否定できる。政府が国債を発行しても買うのは日銀。国債の価格が上がれば日銀の資産が増えるし、下がれば政府の借金が減る。国の財務状況を見る時には、政府と日銀のバランスシートをセットで見るのが国際的なスタンダード。

インフレ目標の設定で「日銀の独立性」が奪われる

たまにニュースで見かける「日銀の独立性」。このワードが出てくるときは「失われる」や「損なわれている」などが後に続き、ネガティブな内容がほとんどだ。日銀の独立性が担保されるべきは、手段についてのみ。物価上昇率などの目標を決めるのは、政府の仕事。エセ経済学者は、「日銀は政府の干渉されずに目標を立て実行するべき組織」と説くが、政府が目標を立て、日銀がそれを実行する。どうやって目標を達成するかは、政府の干渉が受けるべきではないというのが、「日銀の独立性」の正しい理解。

日本は人口減少なので長期間デフレが続いている

「日本がなかなかデフレから脱却できないのは、人口が減っているからだ」という人は多い。ワイドショーでも、ほとんどの出演者が少子高齢化と経済縮小をセットに語る。景気を測る代表例である物価上昇率があるが、物価の上昇と人口の増加はほとんど相関関係がない。関係があるとすれば、物価の上昇と人口の減少。つまり、人が減るとモノが高くなる。当然といえば当然の話。人が減れば生産力が落ちて供給量が減るからだ。同時に、需要の量も減るが、供給量の減少のほうが強いので、「需要過多」になり値段が上がる。ただ、これは過去の統計から言えることであって、機械化や自動化が進むことを考えると相関関係も変化する。少子高齢化や人口減少は、先行き不安の枕詞として使われがちだが、憶測や主観に基づいた主張からは何も生まれない。