Unlimitedに上機嫌

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気になる2社(イトクロ、エフアンドエム)を財務分析。

気になる企業を見つけたので、財務分析を行おうと思う。気になったら、真っ先に決算書を覗くようになったので、「会計オタク」と自称してもいいのではないかと考えている。

1社目は、株式会社イトクロ東京証券取引所のグロース市場に上場している(証券番号6049)。教育関連のポータルサイトを運営するIT企業だ。業種区分は、サービス業となっているが。

事業内容は、主に2つ。「メディアサービス事業」と「コンサルティングサービス事業」。売上の99%が前者の事業によるものなので、ほぼメディアサービス一本の会社と考えて問題ないだろう。四季報の「販売先」にトライグループとあるので、自社が運営するポータルサイトからトライグループの運営する学習塾・家庭教師に送客するというのが、ビジネスモデルだと予想できる。

大株主の状況は、以下の通り。

出典:楽天証券

全体の54.6%の株を社長である山本氏が保有している。創業者が筆頭株主というもので、社長は1978年生まれの45歳。リクルート→カカクコムを経て、2006年にイトクロを創業。創業からわずか9年で上場を果たしており、短期間で急成長を遂げたベンチャー色の残る上場企業と見るのが良さそうだ。従業員の平均年齢も31.9歳と若い。社長がリクルート出身ともあり、上昇志向の強い若手のリクルート出身者が多いのではないかと予想する。

過去5年間の業績をざっと見た感じ、売上は40億円を行ったり来たりしている印象。本業の儲けを示す「営業利益」は、やや右肩下がり。2022年10月の純利益の予想値はマイナスになっており、株価を見ても3000円台をつけていた2019年3月以降下がり続け、2023年1月10日時点は271円。減収減益が続く業績内容から、売り圧力を強める投資家マインドが分かりやすく表れている。

では、決算書を見てみよう。「2022年10月期の決算短信」の「資産合計」は、9,029,916。単位が(千円)なので、約90億円の資産を保有しており、前期に比べて約10億円減っている。「現金及び預金」が全体の約85%を占める。

約90億円の資産が「どこから調達しているのか」を見るために、「負債の部」と「純資産の部」に着目する。「純資産合計」は、8,602,395で約86億円。事業によって得た「利益剰余金」は約62億円ほどあり、前期に比べて約4億円減っている。重要なのは、資産と負債のバランス。約90億円の資産に対して、負債は約4億円。前期に比べて半分以下になっており、固定負債の「資産除去債務」が減ったことが要因となっている。バランスシートを見て言えるのは、「この1年間本業はあまりうまくいかなかったが、負債を減らすことで資産と負債のバランスは保たれた」という感じ。

続いて、あまり上手くいかなかった本業の数字を見てみよう。全事業の「売上高」は約3億円ほど減り、約2億円の営業損失を計上している。つまり、本業は赤字だったということ。最終的な儲け「純利益」はマイナスで、この1年で約3億円の赤字を出してしまった。

赤字の原因を、セグメント情報で確認しよう。この会社は、実質的に「メディアサービス事業」しかしておらず、数字はPLで見たものと同一となる。営業損失の原因として、「学習塾ポータルサイト領域における競合他社がユーザー獲得のために広告出稿を強化したことで、学習塾業界におけるリスティング広告の入札競争が激化し、広告単価が高騰いたしました。」と記載がある。つまり、広告費が高くなったのが赤字の原因だということ。サイトに来てもらって塾に登録してもらう、というビジネスモデルでかかってくるのは「サイトに来てもらうための広告費」。100%自然検索でユーザーを読み込むSEOであれば広告費0だが、同業他者は広告費を積んでユーザーを取りに来る。広告枠にも限りがあり、広告を出したい(買いたい)企業が増えれば広告費は高くなる。Google広告で「塾 東京」の検索結果に対して、ページ上部に掲載される広告費は約1000円。1日100回このキーワードで検索されるとすると、1日10万円、1カ月300万円の広告費がかかる計算になる。仮に、100通りの検索結果に対して広告を出すとなると、月3億円の広告費がかかる。年間36億円で、直近の売上高の約9割を占める。

経営方針としては、主力メディア「塾ナビ」の圧倒的シェアを最重要だと考えており、来期も営業赤字を予想している。言い換えれば、何が何でも「塾のポータルサイト業界No.1」の看板を死守するということだ。今後も競合他社の増加と広告費の増大は続くことが予想されるので、第2の収益の柱を模索したいところだ。

エフアンドエム

2社目は、大阪吹田に本社を置くITコンサル会社。事業内容は、主に3つ。「アカウンティングサービス」「コンサルティング」「ビジネスソリューション」。どれも横文字で、イマイチよく分からない。簡単にいえば、「自社システムサービス販売」「コンサル」「IT機器販売」。「労務管理システム→コンサル契約、IT機器販売」という流れで、ARPU(顧客ごとの単価)を上げる仕組みだと推察。元々は生命保険記帳代行から始まり、中小企業向けに色んな商材・サービスを提供していった会社。

大株主の顔触れを見ても、社長で創業者の森中氏が圧倒的な影響力を持っていると予想できる。

出典:楽天証券

では、決算書を見てみよう。「2022年3月期決算短信」の「資産合計」は、約120億円。「現金及び預金」が約40億円、土地建物が約26億円、「ソフトウエア」が約24億円となっている。前期に比べて「ソフトウエア」の資産価値が約7億増えており、自社で開発しているシステムの市場価値が高まっていると言える。

約120億円の調達先として、「負債の部」と「純資産の部」を確認しよう。「純資産合計」は約90億円ある。約120億円の資産に対し、負債は約30億円。負債に対して資産が多く、財務状況としては健全であると言える。長期借り入れなどはしておらず、「利益剰余金」が前期に比べ約10億円増えていることから、「2022年度は本業がうまくいき、利益、資産ともに増やすことができた1年」と言えそうだ。

損益計算書を見ても、事業全体の「売上高」「営業利益」ともに増加し、「当期純利益」も1年前に比べて約7億円増えている。「セグメント情報」で業績を詳しく見ると、主要3事業ともに増収増益を記録している。特に、「コンサルティング事業」は売上前年比62%増、セグメント利益92%増の高業績。コロナによる行動制限が解除され、業績回復した企業とのコンサル契約が実を結んだと考えられそうだ。