Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

「デフレって悪いこと?」「デフレが円高を呼び起こすって?」

タイトルに魅かれてこちらの本を読んでいる。

最近別の本で、金融緩和について齧ったので、第1章の「デフレと円高はなぜ良くないの?それを防ぐにどうすればいいの?」という節から読み始めた。

そこですぐに理解できなかったのが、以下の一文。

つまり、現在の日本のように長くデフレ状態にある国は、自国の通貨を高めに誘導する原因を自らの内部に抱えることになる」

出典:『日本の大問題が面白いほど解ける本~シンプル・ロジカルに考える~ (光文社新書)

初版が2010年のかなり前の本なので、ここにある「現在の日本」は今から10年以上のこと。状況は違うが、文言の理解に必要な知識は変わらないので、この一文を自分なりの言葉で説明してみようと思う。

デフレとは

デフレとは、モノの値段が下がってお金の価値が上がっている状態のこと。デフレと聞くとすぐに景気後退をリンクさせるが、両者は必ずしもイコールではない。

「モノの値段が下がる」は、一見良いことのように思える。消費者からすれば、安くモノが手に入る方が嬉しい。だが、デフレで得をする人はそれほど多くない。デフレの恩恵を受ける人として、年金受給者が挙げられる。日本では、景気の動向に関わらず毎月受け取る年金が変わらない。収入が変わらず、安くモノが買える状態は、年金受給者の購買力を高める。また、正社員もデフレで恩恵を受けることが多い。一般的に、彼らは賃金を下げられることはない。労働組合などが、「従業員をモノ扱いするな」と声を上げるからだ。

デフレを売り手(企業)視点で考えてみる。「モノの値段が下がる」デフレ下では、去年と同じ数を売っても売上は下がる。去年は、100万円の売上を立てるのに100円の商品を1万個売れば良かったが、値段を80円に下げた今年は100万円の売上を立てるには1万2500個売らなければいけない。仮に、去年と同じ1万個しか売れなかったら、2万円の減収となる。先ほども書いたように、正社員の給料を減らすことはできないとなると、パートやアルバイトの給料や人員を減らす必要がある。また、それだけでは足りない場合、設備投資などを抑えないといけなくなる。

結果的に、デフレによって恩恵を受けるのは、収入が減らない年金受給者などの一部の人たちだけで、非正規労働者などの失業者が増え、企業は稼げなくなり、経済が縮小していくことになる。

為替は、購買力の比率で決まる

デフレも、日本だけで終わるなら良い。経済困窮者の支援を手厚くすればいいからだ。しかし、日本は他の国との関係で成り立っている。結果から言うと、デフレは円高を生む。デフレは、「モノが余って、金が足りない状態」と言い換えることができる。みんなお金を使わないで置こうとする状態。日本がデフレになっている時に、アメリカでインフレになっているとどうなるか?インフレとは、デフレの逆に「モノが足りなく、お金が余っている状態」。みんなバンバンお金を使う状態。為替とは、自国と他国の通貨の関係。デフレにある日本はお金が足りない、インフレにあるアメリカはお金が余っている。日本とアメリカでは、どちらが相手の通貨を買う力を持っているか?当然、アメリカ。なぜなら、インフレにあるアメリカは「モノが足りず、お金が余っている状態」だからだ。この関係を「円高ドル安」と言う。

円高は、日本にとって良いことか?円高とは、1ドルが100円から90円になること。日本は自動車などを売ることが多い「輸出大国」。円高の場合、自動車の売上はどうなるだろうか?1ドル=100円の日に、1台100ドルの自動車を輸出すると100万円を手に入れることできる。円高が進み1ドル=90円の日に、1台100ドルの自動車を輸出した時は90万円しか手に入らなくなる。つまり、輸出大国の日本にとって、円高は良くないことである。

続いて、金利の話。金利とは、お金を借りた時にプラスで返さないといけないお金の割合(利息)。デフレは、モノが余ってお金が足りない時。銀行にお金を借りる人は、企業。デフレの時、企業は積極的に設備投資をしなくなる。なぜなら、お金をかけてモノを作っても売れないからだ。次に、インフレにあるアメリカを考えてみる。「モノが足りずに、金が余っている」インフレ下のアメリカでは、企業はどんどんモノを作るためにお金を借りようとする。銀行も、お金を借りやすく金利を下げる。先ほども言ったが、世界は一つの大きなマーケットなので、他の国の動向に合わせて金利を合わせようとする。ニュースでも、「FOMCアメリカの中央銀行)の値下げを受けて、日本の中央銀行も値下げに踏み切りました」みたいなことを耳にすることがある。アメリカや周りの国々が同時に金利を下げた時、日本だけが金利を下げないとするとどうなるか?これは、実際にリーマンショック直後に起きたことで、国際的に「日本の金利は高い」と評価された。日本の金利が高いとは、「日本円で日本の銀行に預けておくと得」であり、世界中で日本円を買おうとする人が続出した。アメリカドルと日本円を両方持っている人は、アメリカドルを売って日本円を買う。売られやすいものは価値が下げり、買われやすいものは価値を上げる。価値が下がるアメリカドルと価値が上がる日本円。この動きは、「円高ドル安」と表現される。

つまり、現在の日本のように長くデフレ状態にある国は、自国の通貨を高めに誘導する原因を自らの内部に抱えることになる」

出典:『日本の大問題が面白いほど解ける本~シンプル・ロジカルに考える~ (光文社新書)

最初に取り上げた一文は、「デフレ下にある日本は、そもそも円高になりやすい状況にあった。デフレは、輸出国日本にとって他国の通貨を買う力を弱らせていた。世界各国の協調利下げにも乗らなかったことも災いして、ますます円高になる状況を作ってしまった」みたいな理解で、正しいと思う。