Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

著:高橋洋一『会計学入門』この本で財務分析ができるようになった

高橋洋一さんが言う「人生で勉強しておいた方が良い3つの学問」の一つ、会計学。お金の流れを見るための学問で、経済活動を行う上で最も重要な学問だと、本書冒頭に書いている。

「会計=簿記」とパッと思いいたるのだが、簿記とは何かを尋ねられると答えられない。商業高校で習うそらばんを使う教科ぐらいしか知らない。

こちらの本で、会計とは何か、特にバランスシートと損益計算書の見方について分かりやすく説明してくれている。まだ2割を残している段階だが、会計は経理や経営者だけがやるものではないことに気づいた。

先ほども書いたが、会計とはお金の流れを見るためのもの。「働く→収入を得る→消費する」という日常の経済行動は、お金の流れが伴う。つまり、会計を学ぶことは日常生活をお金がどう動いているかという視点で見ることと言える。

本書は、第0~第4章の全5章構成になっている。各章の内容は、ざっと以下の通り。

  • 第0章「なぜ会計を学ぶべきなのか」
  • 第1章「会計の基本知識」
  • 第2章「金融と税金を会計で理解する」
  • 第3章「財務書類を読む」
  • 第4章「国の決算書を読む」

第1→2→3章の順で読めば、会計の基本知識&簡単な応用はコンプリート出来る。第1章~第2章の内容を、備忘録的に書き上げていく。

  • BS(貸借対照表)とは、ある時点のお金の状況を表したもの
  • PLとは、ある期間のお金の流れを表したもの
  • 複式簿記とは、左右に分けてお金の出入りを管理するものを指す
  • BSの左は「どこに使ったのか(資産)」、右は「どこから入ってきたのか(負債)」を書き込む
  • BSを見る時には、「誰の」BS(お金の状態)なのかを意識する
  • BSの右側は、負債(誰かに返さないといけないお金)と純資産(返す必要のないお金)に分けられる
  • 企業の財務状況を確認するときは、BS→PL→事業構成(セグメント情報)の順で見る
  • BSとPLの違いは、ストックとフローで考える。ストックとは、ある時点でのお金の状態。決算日(例:2023年3月31日)という特定の時点のこと。フロートは、ある期間のお金の流れ。第9期(2022年4月1日~2023年3月31日)の1年間という幅で起こったお金の流れを表す。
  • PLとは、どれくらいの収益が出て、そこからどれくらいの費用が差し引かれ、最終的にどれくらいの利益が残ったのかを示した表。
  • PLの純利益は最終的に残った資産であるから、BSの純資産に「利益剰余金」として計上される。
  • 負債(誰かに返さないといけないお金)はないに越したことはないが、重要なのは資産と負債のバランス。資産よりも負債が大きい状態を「債務超過」と呼ぶ。倒産は債務超過が原因。
  • 財務状況は、「グロス」ではなく「ネット」を見る。「グロス」とは資産や負債を別個で見ること。「ネット」とは資産と負債をセットで見ること。PLについても同様で、売上高単体を見るのではなく、費用と利益もセットで見る。
  • 内部留保」はBSの「利益剰余金」を指す。利益剰余金とは、事業によって得た利益。調達と運用を行う企業活動では、調達部分に当たる。家計のたんす預金のような、動くことのないお金ではなく、配当金の支払いや固有資産などに充てられることが多い。

BSとPLで、それぞれ最低限押さえておくべきことは以下の通り。

BS

  • 左側が資産、右側が負債
  • 左側の資産から右側の負債を引いたものが、純資産
  • 財務状況の良しあしは、資産と負債のバランスで分かる(プラスであれば健全、マイナスであれば不健全)

PL

  • ある期間(1年間、半年間、3カ月間)のお金の流れをまとめたもの
  • 「売上高」、「営業利益」、「当期純利益」さえ押さえればオッケー

企業の財務分析をやってみる

本書第3章では、実際にある企業(フジテレビと朝日新聞)の財務書類を見せながら財務分析を行っている。著者のように、企業の本質を丸裸にできるか分からないが、身近な2つの企業の財務分析を行ってみたい。

見る順番としては、BS→PL→セグメント情報。いずれも直近3年分の期末資料を見てみる。

神戸物産

毎月お世話になっている「業務スーパー」を運営する上場企業。コロナ禍でも事業を伸ばし、過去5年で株価も4倍に上がっている成長企業。

まずは、「2022年12月15日」のBSの「資産合計」を見てみる。180,275と表示されているが、単位は(百万円)なので約1800億円の資産があることが分かる。大きい順に、「現金及び預金」「機械装置及び運搬具」「建物及び構築物」「売掛金」となっている。現金が一番多いのは、モノを仕入れて商品として売るという事業を取っているから。

続いて、約1800億円の資産の出所を見てみる。負債合計を見ると、1年前に比べて増えている。昨年度末の負債合計は83,055とあるので、約830億円の負債(誰かに返さないといけないお金)があることが分かる。財務状況の良し悪しを判断するための「資産と負債のバランス」を見ると、資産が負債に比べて2倍以上多い。これはかなり健全な財務状況と言えそうだ。負債の増加の原因は、固定負債の「長期借入金」が増えたことにある。だが、それは問題ではない。純資産合計を見ると、前期より増えている。

これらの数字から読み取れるのは、「神戸物産という会社は経営がうまくいっており、ストックが豊か」ということ。

次に、フローを見てみよう。PLを見ると、事業全体の「売上高」も「営業利益」も「当期純利益」も前期より増えている。「この1年間、事業がうまくいって、去年より多くの利益が出た」ということだ。

これを踏まえて、見ておきたいのが「セグメント情報」。

神戸物産は、「業務スーパー」「外食・中食」「エネルギー」の3つの事業をしている。売上高、利益ともに、全体の99%を「業務スーパー事業」が占めている。「外食・中食事業」は赤字になっている。この赤字が2022年度だけのものなのか、ずっと続いているものなのかを確認するために、過去3年間の「外食・中食事業」の売上高・セグメント利益を表にしてみる。尚、2020年度は「神戸クック事業」の結果を表示。

年度 売上高 セグメント利益
2022 3,889 △455
2021 2,639 △68
2020 2,278 124

直近3年だけを見ると、増収減益という結果が明らか。2021年度から赤字に転じた理由は、同期に子会社が支配下から外れてしまったことが挙げられる。利益率の高い運営を担っている子会社がいなくなることで、小規模な事業は赤字に転じる。複数の事業を展開するグループ企業ではよく見られることで、なぜそうなったのかは前後にある説明文から読み取る必要がある。

BS→PL→セグメント情報の順で財務状況をして分かったことは、「神戸物産は本業のスーパー事業が堅調に成長していて、財務状況も良い。再生エネルギーや外食・中食事業は第2,3の柱となるために10年スパンで育てる必要がありそう」。

楽天

楽天モバイルで、毎月3000円強でデータ使用料150Gほど。ほぼ常時テザリングしていて、Wi-Fiの契約をせずに済んでいる。地下鉄や都市部では弱いが、ほとんど家で過ごす今のスタイルでは楽天モバイルが最強だと断言できる。そんなインフラと化している楽天だが、よからぬ噂も。ホリエモンYouTubeで、ソフトバンクととともにいつ潰れてもおかしくない企業として、楽天を挙げていた。サムネを見ただけなので経緯は分からんないので、財務諸表を見て真偽のほどを確かめたいと思う。

まず、「2022年11月11日」のBSの「資産合計」をチェック。19,745,910とあり単位は(百万円)なので、約20兆円の資産があることが分かる。どんな資産を多く持っているのかというと、「現金及び現金同等物」「証券事業の金融資産」「銀行事業の貸付金」「カード事業の貸付金」の4つが全体の7割を占める。このことからも、楽天の主力事業が「証券」「銀行」「カード」ということが浮かんでくる。反対に、不動産や建物などの「有形固定資産」は全体の約6%にとどまる。と言っても、1兆円の固定資産は持っているのだが。資産(どこに使っているのか)だけを見ると、楽天はITというよりも金融屋であると言えそうだ。

では、約20兆円もの資産は「どこから調達しているのか」を見てみる。まず、負債の合計が前年同期よりも増えている。増えた原因は、「銀行事業の預金」「銀行事業の借入金」の2項目で約2兆円増えている。どちらも銀行事業に関するもので、「預金」は口座を持っている人から預かっているお金、「借入金」は銀行事業をするために銀行から借りているお金。「預金」が増えていることは、楽天銀行を使う人が増えた、もしくは使っている人の預ける額が増えたことを意味するのでプラス材料。「借入金」については、収益に結びついているかが重要なので、後ほどPLとセグメント情報で確認するとする。

ちなみに、資産から負債を差し引いた「純資産」は、約1兆円。プラスなのですぐに破綻するような税務状況ではないが、前年同期に比べて減少しているのはちょっと不安材料。

続いて、フローを見てみる。PLは2種類載っている。2022年度第1~3期分と2022年度第3期分。より長い期間の前者を見ると、事業全体の「売上高」は増えているが、「営業損失」と「当期損失」は増えている。損失が増えているとは赤字が拡大しているということで、「入ってくるお金も増えているが、それ以上に出ていくお金が増えている」のが楽天の現状。

なぜ赤字が増えたのかを知るために、セグメント情報を見る。楽天は「インターネットサービス」「フィンテック」「モバイル」の3つの事業を行っている。いずれの事業も昨年同期に比べて売上高が増えいている。しかし、利益も増えているのはフィンテック事業だけで、インターネットサービスは減益、モバイルは赤字の拡大になっている。損益額は、インターネットサービス584億円、フィンテック744億円、モバイル約▲3800億円になっている。つまり、モバイルが生む約4000億円の赤字を、他の2事業で補填できないから赤字が拡大しているのが楽天の事業成果。無制限にギガを使えるのはユーザーにとっては超嬉しいことだが、楽天にとっては悩みの種であることが分かる。仮に、ケータイ料金を1,000円上げて無制限を続けたとすると、楽天ユーザーが500万人として50億円売上がのびる。それでも、依然としてモバイル事業の赤字を他の2事業で補いきれない。それに、値上げをするとユーザー離れも起こる。楽天モバイルが選ばれる最大の理由は、安さ。モバイル事業の赤字を是正しようと値上げを敢行しても、ユーザーの減少から赤字が拡大することが予想できる。モバイル事業は赤字事業だと割り切って、他の2事業の拡大、もしくは新しい収益源を模索するのが妥当だと考えられる。