Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

電卓やパソコンの操作音、行動経済学でどうにかならんかね?

某ラジオ番組で、リスナーから「同僚の電卓をたたく音がうるさいです。直接注意するのは大人気ないし人間関係にヒビが入りそうでできないでいます。皆さんならどのように解決しますか?」という相談メールが読まれた。これに対し、パーソナリティは「上に相談して全体へのアナウンスとして注意してもらう」や「その人よりも大きな音で電卓を叩く」とアドバイス。最終的には、「完璧に解決するのは難しいな~」と次の相談に移った。

今は誰かと仕事をしていないが、世の中的には身近なトラブルだと感じた。Twitterで「パソコン うるさい」と検索すると、タイピング音に悩まされている投稿が大量に見つかる。

新幹線や図書館、フリースペースなど公共の場でのPC操作音が気になって集中できないのは、現代人のあるあるなのかもしれない。くしゃみや鼻唄などと同じで、タイピング音は自分では客観的に聞けないから厄介だ。

身近に起こる電卓やパソコンの騒音問題。また会社員に戻るかもしれない時のために、解決法を用意しておきたい。参考にするのは、最近何かと開いてしまうこちらの本。

心理学と経済学がミックスした、人間の行動を誘導することにも使える行動経済学。今回は、行動経済学を使って、電卓やパソコン操作をうるさい人を静かにすることはできないか、について考えてみたい。本書に、応用できそうな例が載っている。以下は、ダイエットをしたい人に提案できるナッジ(アプローチ法)だ。()内は、行動経済学インセンティブ(動機)。

  • 1日7000歩以上歩けばお金がもらえる、スマホゲームのポイントがもらえる(金銭的報酬)
  • 最初にまとまった金額やポイントをもらって、1日7000歩に満たない場合差し引かれる(機会損失)
  • 最初に目標を決めて一定の金額を預け、達成できなかった場合没収する(コミットメント)
  • 手の爪に「ダイエット」と書く(コミットメント)
  • 日々の体重を記録し、平均体重との差を確認する(社会規範)
  • 減量を目指すグループに入って、毎日体重を報告し合う(ピア効果)
  • スポーツジムのトレーナーの評価と連動する、体重が増えればトレーナーが減給され、落ちれば昇給する(贈与交換)
  • 食事や運動をルール化する(デフォルト)

ちなみに、これらのナッジはこれまでに研究がされ続けている。少額であっても金銭的報酬は効果があること、損失フレームの方が報酬を与えられるよりも効果が大きいことなどが実験で分かっている。

上に挙げたダイエットのナッジを参考にして、タイピングの静音化のナッジを考えると以下のようなものが挙げられる。

  • 静かにタイピングをした場合、現金やポイントがもらえる(金銭的報酬)
  • 大きな音を立てた人は、減給や社内評価が落ちる(機会損失)
  • 社内で定量的な基準を設けポイントを与えて、達成できなかった場合は没収する(コミットメント)
  • パソコンの画面やキーボードに「静かに操作」とメモを貼る(コミットメント)
  • 社内のグループラインで、毎日「パソコン操作が気になる人がいたか」を報告し合う(ピア効果)
  • 周りからパソコン操作のうるさいと指摘された場合、その人の上司の評価が下がり、問題のない人の上司はプラスの評価を受ける(贈与交換)
  • タッチ音を読み取り表示するキーボードを使う(デフォルト)

どうだろうか?現金やポイント、上司の評価に反映など、すぐには実践ハードルの高いものが多いが、パソコンやキーボードに静音操作を意識づけるメモはすぐにでも導入できそうだ。理想は、自分が出しているタッチ音を計測しアラートを出すキーボードを導入することなのだろうが、そんな細かいところに設備投資できるほど余裕のある企業はほとんどいないと思う。予算をつけるためには、パソコンの騒音が生産性にどれくらいの影響を与えるのかを証明する必要があるなど、かなりのエネルギーと工数をかけなければいけない。

視点を変えてみては?

ここまで、行動経済学で解決法を出すことにこだわり、「音を出さないようにする」という視点に囚われていた感がある。いくら行動経済学が素晴らしい学問でも、不便だが仕方なく我慢していることは世の中にたくさんある。ましてや、電卓やパソコンの操作音は”ほぼ”無意識で出してしまっている音。無意識で出している音を抑えろと言われても難しい。そこで、視点を変えて「出しても問題ない状況」を考えてみよう。

例えば、静音キーボード。ネットを調べてみると、静音をウリにしたキーボードは山のように見つかる。どの程度静音効果があるかは商品によって異なるが、自分が出している音を検知するキーボードよりもずっとリーズナブルで実践的だ。社有パソコンの入れ替え時に、ちょっと交渉すればオフィスの静音化は簡単に実現しそうだ。

続いて、作業空間を変える方法。具体的には、作業スペースを広げる方法と別にする方法。電卓やキーボードの操作音が届く範囲は、せいぜい5メートルぐらい。10メートルも離れれば、まず気になることはないだろう。つまり、騒音を出す人から距離をとる方法。しかし、オフィス面積や席が固定されている場合は実践できない。そこでもう1つの「作業スペースを別にする」方法。これは、テレワークの推奨と言い換えることができる。それぞれが自分の家で仕事をすれば、お互いの操作音は届きようがない。コロナを機に一時かなり進んだが、また出社スタイルに戻った企業は多い。業種や職種によってテレワークの向かないケースはあるが、オフィスでの生産性と変わらない場合は会社としては推進すべき。生産性の比較やコスト的な優位性など、数字やデータを用いて説得すれば騒音から逃れられる機会を手にできる。