Unlimitedに上機嫌

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「国債=借金=悪」という洗脳教育を受けてきたことに気づいた2023年

これまで、「国債=借金=悪」と信じて疑ってこなかった。なぜなら、小学生の時から教科書やニュースで、「国債費、ついに1000兆円!」などと否定的なものだと教えられてきたからだ。しかし、真実はそうではない。そのことを教えてくれたのは、またしてもこの人の本だった。

第一章では、国債の基礎知識が書かれている。小見出しとともに、内容を自分なりに書いてみた。

企業と同じようにお金を借りる

国を運営するために金が必要。国の運営に必要なお金を調達する手段は、主に2つ。徴税と借金。国は、消費税や法人税などを設けて国民からお金を調達することができる。もう1つの借金は、国債を発行して市場に買ってもらう手段。企業が事業運営のために銀行にお金を借りるのと同じ。「国債が増えると将来への負担が増大する」という人は、徴税を増やす、つまり税率を上げることは許容するだろうか。たぶん、誰も支払いが増えることを喜ばない。

政府は予算を立てて、足りない分を国債でカバーする

国債発行」という文言を見ると、意味のないことに使われているイメージを思い浮かべる。しかし、国債は税収で賄えない分を支払うため。予算は8月からいくつかのプロセスを経て、3月末の国会で決まる。予算案は「どれだけ使うか」だけでなく、「どこから出すか」もセットで考えられる。先ほども書いたが、国の運営にかかるお金の調達手段は、徴税と借金。人口や企業数、景気はある程度予想できるので、どれだけの税収があるかは計算できる。もし、500兆円の使いたいのに、400兆円しか税収がみこめない場合は、不足分の100兆円分の国債が発行される。これは、企業が予算を決める時と同じ。1年間の事業運営に1億円かかるとして、5000万円しか売上が見込めない時、残りの5000万円は融資を受けるなどして対応する。企業の借金はあたり前なのに、国の借金と聞くとマイナスな印象を持つのはナンセンス。「国債発行は悪」とイメージ形成の裏には、増税するしかないという国民の合意を得る政府の思惑がある。

国債の売買は「セリ」「オークション」と同じ

国は、借金と税金で運営されている。税金は個人や企業から取るのは分かる。では、国の借金は誰が負担するのか。国債は、金融機関が参加する入札で決まる。ドラマや映画でよく見る、美術品のオークションみたいな売買が行われる。国債価格は100円が基本なので、100円01銭みたいな幅で変動する。金融機関は誰がどの国債を落札したかが分からないようになっていて、入札終了後落札金額の高い順に国債が金融機関の手に渡る。予算の不足分を満たすまで売り渡され、それ以下の価格で入札した金融機関は国債を手に入れることができない。

日銀は民間金融機関から買った「国債の代金」としてお金を刷る

入札により、誰に国債が渡るのかが決まった。ここで、政府の銀行である日銀は、金融機関が買った分のお金を刷る。社会人が何も受け取ることなくお金を払うことがないように、日銀も、常に何かを受け取ったらお金を刷る。日銀が民間金融機関から国債を買うと、その「代金」」は民間金融機関が日銀に持っている「日銀当座預金」に振り込まれる。口座においておけだけでは、お金は増えない。民間金融機関はこれを銀行に貸すなどして、お金を増やそうとする。たくさん貸そうとすれば、その分金利が低くなる。金利が低くなれば、企業は積極的にお金を借りようとする。企業持つお金が増えると、給料の支払いなどで世の中に出回るお金が増える。物価は「モノの量」と「お金の量」で決まる。お金がたくさん世の中に出回れば、相対的にモノの価値が上がる。モノの価値である「物価」が上がり続ける状態は「インフレ」と呼ばれ、デフレの状況下ではこの状態が景気回復に繋がる。

日銀は「国債で得た利子収入」を政府に上納する

日銀は、民間金融機関から国債を買い入れる。国債は借金で、借金には利子が発生する。国の借金を肩代わりしている日銀には、毎年利子が入る。政府と日銀は、親会社と子会社の関係。子会社である日銀に入った利子収入は、親会社である政府に「配当」として納められる。これを丸々納めることになっていて「国庫納付金」と呼ばれる。政府からすれば、子会社である日銀から納められるお金は収入となり、国民から得る税収とは違うので「税外収入」と呼ばれる。

「親会社(政府)が得たお金=子会社(日銀)が納めたお金」を会計学的には、政府の資産が増え、日銀の負債が増えたと説明できる。日銀が発行する紙幣は無利子だが、国が発行する国債には利子がつく。つまり、国が発行した国債は、子会社の日銀が買い利子がつき、最終的に政府の資産になる。自作自演的な資産の増大劇が、会計的にみた国債発行の真実だ。

日銀が国債を買うと「円安」になる

政府は国債を発行してお金を調達する。民間金融機関は、オークションで国債を買って、それを日銀が買う。日銀が得た利子は、政府の資産として計上される。これが、国債にまつわるお金の流れ。日銀が民間金融機関から国債を買うことは、「買いオペ」と呼ばれ、金融緩和の一環とされている。

では、買いオペをすることで為替はどう変化するか。為替は二国間のお金の総量で決まる。もし、日銀が買いオペをしてFRBアメリカの中央銀行)が何もしなかったら、円安円高どちらに動くか。買いオペは、お札を刷って民間金融機関に渡ることを意味するから、日本円の総量が増える。価値は量が増えれば下がるので、相対的に日本円の価値が下がる「円安」になる。具体的には、100円が110円方向に動く。ニュースを見ると、「パウエルさんの発言で、円安になった」と説明されるが、正確には各国の中央銀行がお金の量を調整することで為替変動が起こる。

 

ここまでが、第一章の内容。続いて、第四章の「国債と税」について。

経済を「道徳」で考えると、大きく見誤る

著者の高橋さんは、マクロ経済を「地球(国)規模の視点」、ミクロ経済を「半径1メートルの視点」で経済を見ることだと言う。「借金は悪だ。国債を発行すると、将来への負担が増える」と唱える人は、ミクロ的な視点で経済を見ていると言える。「経済政策は無責任にすべき」が政策を考える人たちの定説らしい。これを聞くと、国民の意思を無視して好き勝手やると考えてしまうがそうではない。もし、国債を「無責任」に発行したらどうなるか。金融機関が大量の国債(資産)を手にして、日銀が大量のお金を刷る。大量のお金を手にした民間金融機関は、バンバン企業や個人にお金を貸す。ドンドン借りられるようになった企業は、積極的に設備投資をするようになる。機械だけあっても生産できないので、積極的に人を雇うようになる。結果的に、みんなが仕事を手にして消費が増える。消費が増えると企業が儲かり、給料も上がる。理屈的には、無責任な国債発行は、失業率を下げる結果となる。「借金は悪だ」という「道徳」で経済を考えると、このようなロジックにはたどり着かない。

政府がお金を使うということは、国内にお金を巡らせること

国が借金をすることに対するネガティブなイメージは、少しずつ払拭された。しかし、それは借金が意味のある形で使われるという大前提があってこそだ。例えば、政治家や癒着企業の飲み食いのために、国債を発行されていても意味がない。では、国は何のためにお金を使うのか。それは、国内にお金を巡らせるため。政府が国債を発行して、日銀がお金を刷る。こうすることにより、お金は金融機関を経て企業、国民に渡る。もし、経済が過熱しすぎた時には、税率を上げて国民からお金を吸い上げるか、日銀が持っている国債を売ればいい。国が借金をするときは、国内により多くのお金を巡らせようとするからに他にならない。ただ、お金を垂れ流ししているかもしれないので、お金を流した成果もちゃんと見ないといけない。「費用便益」は、国債を発行して支出を増やした時、どれくらい社会のためになったのかを数値化したものである。

今の国債発行額では、足りないくらい?

5年前くらいまで、国債は品薄状態にあった。国債は、株式などと同様に金融市場で売買される。本書では、「国債は金融市場の『コメ』だ」という説明がある。2017年に異例として、日銀が保有する国債を金融市場に放出するということがあった。理由は、金融市場に国債がなかったから。国債は、民間銀行や証券会社などの資産運用する企業にとっては超重要なもの。現金を現金のまま持っていても増えないので、金融商品に変えて資産を大きくしようとする。国債はローリスクで価値が安定した金融商品の筆頭なので、そうした企業の需要は多い。ある時、品薄になりすぎて値段がつかない状況を見て、特例措置として日銀が保有している国債を売った。しかし、品薄の市場にモノ(国債)を足す役割は、政府が果たすべきもの。つまり、政府が国債の増刷を渋ってきたツケを、子会社である日銀が払ったと言える。

国債は将来世代への「投資」という側面もある

国債=借金=悪」という理屈を頑なに信じている人は、税収だけで国を回せと主張しているようなものである。しかし、近年の歳入と歳出のバランスを見ても、税収だけで国の運営費を賄うのは無理。そうなると、増税しかない。しかし、増税をすると消費が冷え込む。税金を納めるためにお金を極力使わないでおこうと考えるからだ。また、税金は誰にも等しく課せられる。対する国債は、買いたい人が買えばいいもの。税金は支払ないと罰せられるが、国債を買わなくても文句を言われることはない。では、なぜ一部の人は国債を買うのか。資産を増やすため。国債は、株式と同じように需給のバランスによって価値が変動する金融商品。株価のように何円ではなく、何%という利率が変動する。利率とは、1年で得られる利子のパーセンテージ。もし、利率1%の国債を1万円1年間持ち続けた場合、100円の利子を受けとることができる。国債は、その国が発行する借金の価値、つまりその国の将来性を示しているから、日本国債を買うことは日本の将来に投資しているということだ。

教育国債は「将来へのツケ回し」ではない

著者は、将来への投資として「教育国債」を発行すべきだと主張している。実際に、当時首相だった安倍さんにも理解が得られ、国会でも提案を行ったそうだ。しかし、財務大臣の麻生さんが「教育国債は、赤字国債と何が違うのか。発行することで、結局将来へのツケが増える」と否定的な意見を示し、実現が遠のいてしまった。この発言は、「教育には投資する価値がない」ともとれる。しかし、教育への投資は道路や交通インフラなどの有形資産への投資よりも効果が高いことは統計的にも明らかになっている。具体的には、社会全体にかけた費用に対して2.4倍の便益(リターン)が見込まれるという試算も出ている。日本は、他の先進国に比べて高等教育における公的な負担が少ない。国を挙げた高等教育の推進で、日本は世界に大きく遅れているとも言える。教育は効果が表れるまでに時間がかかる。オペレーションとしては、距離と柔軟性に優れた地方行政がやるべきで、長期的な投資は税金ではなく国債でやるべきである。もし、将来の教育に投資することができて、資産形成にもなるという「教育国債」ができれば、国債に対する考えが変わり国債を買おうとする人も増えるのではないだろうか。

「保険」という名の増税を企む財務省

5年前に、当時新人だった小泉進次郎議員たちによって、「こども保険」なるものが提案された。給料を受け取る時、社会保険料として天引きがされるが、「こども保険」という名目で追加で徴収しようという案だ。これは、「保険」という仮面を着せた増税案だ。保険とは、起こるかもしれない事故に備えてお金を払うことだ。将来交通事故にあうかもしれない、将来ガンになるかもしれない。そうした将来のリスクを感じている人たちがお金を出し合い、事故に遭った人をみんなでサポートするもの。この理屈で考えると、こどもが「将来起こるかもしれない事故」ということになる。事故でこどもが生まれるかどうかは疑問だが、結婚していない独身者も、子供を育て終わった人たちも、「こどもができるかもしれない将来」に対してお金を払うことになる。実現には至らなかったが、2022年突然Twitterに「こども保険」がトレンド入りした。5年前の「悪魔の増税案」を危惧して、ネットでは否定的なコメントであふれかえった。財務省には「増税は最大の勲章」というDNAが生き継いでいるらしい。あの手この手で増税を実現しようとする財務省の思惑に乗らないように、本質を見抜く知識と視点を養わなければいけない。

「半年先の借金をする」というナンセンス

政府が発表する歳出のうち、国債費には利子の支払い分が余分に計上されている。概算で約10兆円。毎年増える国債費に注目をさせ、「国の借金は膨れるばかり。大変な状況です」と国民に思い込ませようとする。しかし、そのうち10兆円は計上する必要のないカサマシ要因。カサマシするのには、もう一つ理由がある。ニュースでもよく「補正予算」とは、本予算の後に起こったことに対して予算を修正したものだ。政府(財務省)は、本予算の時点で国債費を多めに計上している。本来必要のない分の国債を発行しており、無駄な利子が発生している。つまり、遠い将来必要になるお金を調達しているということ。企業でいうと、近々使うあてもないお金を銀行から借りること等しく、こんなに無駄なことはない。コロナ期間中の無利子融資であれば多めに借りておこうとなるかもしれないが、国債には利子が発生する。国債を発行することで、最終的に市場により多くのお金が出回る。しかし、必要もないタイミングで国債を発行しても余計に支払う利子が増えるだけで何の意味もない。国債費のカサマシ申告は、増税を実現させたい財務省のパフォーマンスであり、ムダでしかない。

 

ここまでが、国債と税金の話。早い話が、国債を借金ではなく投資と捉えて、投資の質で国債発行の是非を考えるべきだということ。

第5章では、国債と投資の話。著書でもメディアでも中立の立場を貫く高橋さんが、珍しく特定の金融商品をおすすめしている。それは、個人向け国債「変動10」というものだ。個人で買える国債の一つで、その中で唯一金利変動に応じて利息がもらえる商品になっている。「国債金融商品のプレーンバニラ」と表現される、最もシンプルな資産対象。国の制度で元本保証がされているので、国がつぶれない限り価値が保証されるローリスク商品。リスクが低い代わりに、リターンは年に2回もらえる利子分に限られる。0.05%の最低保証がされているので、1万円の国債を1年間持ち続けた場合10円の利子を受け取ることができる。10万円だったら100円、100万円だったら1000円。「変動10」をおススメしているのは、今が低金利時代だから。低金利とは、将来金利の上昇が期待できる状態であるということ。固定型であれば、買った時の利率を受け取ることが決まっているが、変動の場合は上がった分だけもらえる利息が増える。上がらなかった時は固定の方が得をするが、金利の上昇が期待できる低金利時には変動型の方が良いというロジックだ。