いま使っているのはどの「言語」?
高橋洋一さんの著書で素晴らしい一節を見つけた。
筆者は、「言語」というものを三種類に分けて捉えている。
出典:『ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方』(高橋 洋一 著)
本書の記述を自分なりの言葉で言いかえ、分野と目的をまとめた。
本書の言葉 | 自分なりの言葉 | 分野 | 目的 |
人文科学の言語 | 話しことば | 哲学、歴史、文学、芸術 | 表現する |
自然科学の言語 | 理系ことば | 数学、プログミング | 真理を知る |
社会科学の言語 | 数字ことば | 会計、経済理論、政治、教育 | 未来に繋げる |
薄っぺらい、大したことのない表に思えるかもしれないが、これまで見聞きした言葉や記述で腑に落ちなかった原因は、これが表してくれていると感じている。例を挙げながら書いていく。
夫婦の会話がかみ合わない
女は過程、男は結果を重視する。この価値観の差が、普段のコミュニケーションがうまくいかない原因。そして、コミュニケーションの祖語は夫婦生活の破綻に繋がることも多々ある。男女のコミュニケーションがかみ合わないのは、別の「言語」を使っているから。日本語同士だとしても、女性は人文科学の言語を、男性は社会科学の言語を使っている。言い換えれば、女性は表現したいと考え、男性は未来に繋げたいと考えている。お互いは、別の方向を向いているので寄り添おうと心がけても一向に交じり合うことはない。もし、言葉を尽くしても会話が成立しないと感じた時には、自分と相手はそれぞれどの「言語」を使っているのか、何を目的にしているのかを整理するのが良い。
日本語は、イメージ言語
前職の上司は、「日本語はイメージ言語だから、ほとんどの人はイメージだけで言葉を使っている」とよく話していた。当時は意味が分からなかったが、おそらくほとんどの人は「人文科学の言語」を使っていると言いたかったのだろう。人文科学の言語とは、哲学や芸術が属する言語で、気持ちや感情を表現するためにある。つまり、日常生活ではお互いに気持ちや感情を言語化したものでキャッチボールしているということ。休憩時間のお喋りであれば問題ないが、相手を説得・納得させるビジネスの世界では「人文科学の言語」だけでは足りない。企業は利益追求を目的とする以上、会計や数字、経済などの他の「言語」を使う必要がある。
文系だから数学できなくていい、理系だから政治は知らなくていい
日本語しか話せない人、日本語と英語を話せる人、日本語と英語、中国語を話せる人。全員が同じレベルだとして、3人のうち誰が一番多くの人とコミュニケーションを図れるか。当然3か国語を話せる人。高橋洋一さんは「筆者は、『言語』というものを三種類に分けて捉えている」と表現しているように、芸術数学政治は3つの異なる言語。計算だけが得意な人よりも、芸術に明るい数学教師よりも、政治経済についても造詣の深く哲学の博士号を持つ数学者。ちょっと不公平な前提をつけただが、特定の分野の一流は別のジャンルでも非凡な能力を持っていることも多い。特に、AIやコンピューターに仕事が奪われると言われる中で、文系や理系などの縦割り的な思考にすがっていてはいけない。