Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

行動経済学で「脱YouTube」は可能なのか?

YouTubeを辞めたい。

人気ユーチューバーの苦悩のような書き出しになってしまったが、「配信する」ほうではなく「見る」ほう。簡単にいうと、これ以上YouTubeで時間を浪費したくない。現代に生きるほとんどの人が、同じような悩みや望みを抱いているのではないかと思う。このままでは「ああ、もっとYouTubeじゃない何か有益なことに時間を使えばよかったなあ・・・」と思いながら死んでいくことになりかねない。

これまでにも、いろいろな「YouTubeデトックス」法を試してみた。YouTubeアプリをアンインストールする、スマホを目の届かないところに放置する、見始める前にアラームを設定するなど。しかし、どの方法も効果は一時的で、気づいたらお気に入りのチャンネルで数十時間を費やしたり、ただ下にスワイプして永遠にショート動画を見続けたりしてしまう。

どうにかしたい。そんな脱YouTubeから人生を取り戻すヒントが見つかりそうな本を見つけた。

タイトルからして、お堅そうな1冊。中身は、当然行動経済学について書かれている。行動経済学とは、心理学と経済学を合わせたような学問で、「どうしてそんな選択に至ったのか」「どうすれば幸せな社会を築くことができるのか」について考える学問、だと解釈している。

簡単な例で言うと、「確実に3万円手に入る箱A」と「90%の確率で4万円手に入る箱B」があるとする。あなたは、どちらの箱を選ぶ?みたいな話。

どうして、行動経済学が脱YouTubeのヒントになりそうかと言うと、本書に以下のような一節を見つけたからだ。

現在バイアスが理由で仕事を先延ばしする傾向がある人なら、先延ばしすること自体を面倒にするナッジを作ればよい。

出典:『行動経済学の使い方 (岩波新書)』(大竹 文雄 著)

解消したいのは先延ばし癖ではないが、ここにある「ナッジ」が問題解決の糸口になりそうな気がしてならない。ちなみに、ナッジとは「行動経済学の観点から、その人が取りたい行動を後押しするアプローチのこと」。早起きしたいという人に6時にモーニングコールしてあげるとか、痩せたい人に食事管理してあげたりすること。これまで実践した「YouTubeアプリをアンインストールする」などは、ナッジと言えなくもなさそうだが、行動経済学の観点で考え出したアプローチではない。

本書では、ナッジを使った問題解決には、以下の5つのプロセスをたどると説く。

  1. 意思決定のプロセスの可視化
  2. 行動経済学的に分析する
  3. ナレッジの戦略を考える
  4. ナレッジによる介入をする
  5. 変化を計測する

1つずつ順を追って、ナッジを設計してみようと思う。

意思決定のプロセスの可視化

行動経済学では、意思決定を多用する。今回の悩み「YouTubeを見てしまう」という行動は、いくつかの意思決定をした結果であると言うことができる。結果を変えるには、過程を変えなくてはいけない。本書に載っているクエスチョンに従って、「YouTubeを見る」に関する意思決定を明らかにする。

  • 意思決定の特徴
    • 意識的/無意識にやっているか→(ほぼ)無意識
  • 意思決定のタイミング
    • 能動的/受動的→能動的
    • 何種類の選択肢があるか→見るか見ないか
    • 本人の選択の結果をフィードバックできるか→できる(1日の視聴時間が確認できる)
    • インセンティブは金銭的/非金銭的か→非金銭的
    • 金銭的コスト/心理的コストがかかっているか→特になし
  • 意思決定者の情報量
    • どのような知識があれば意思決定できるか→YouTubeの基本操作
    • それは視覚的/文書情報か→特になし
  • 意思決定者の心理状況
    • よい意思決定をしたとき、すぐ/遅れて利得を得るか→遅れて得る(時間)
    • 感情的な時に意思決定していないか→時に感情的
    • 多大なエネルギーを要するか→エネルギーを必要としない
  • 意思決定時の環境
    • 本人1人/誰かが見ている→本人1人
    • 人の行動に影響を受けるか→特になし

簡単に、「YouTubeを見る」という行動に至るまでのプロセスを可視化してみる。

行動経済学的に分析する

続いて、行動経済学的に意思決定の分析を行う。望ましい意思表示ができない理由「ボトルネック」と、その対策について考える。

ボトルネック 対策
自分がしてはいけないことを本当に理解しているのか? 失っているものの見える化
望ましい行動を知らないからできないのではないか? 有意義な時間の使い方の明文化
(ほぼ)無意識にやってしまうことを解消する方法はないか? YouTubeを開いた時アラームが鳴るようにする
見ることのインセンティブ(誘因)を変えることはできないか? (「暇をつぶしたい」「音が欲しい」「何となくスマホをいじっていたい」)→(「」)
見る(見た)ことに心理的コストはかけられないか? 視聴時間を誰かに共有する、
YouTubeを見てしまいがちなタイミングの行動代案 分からない(予定がない時)、寝起き日記(朝起きてから)、シャワー(帰ってきてすぐ)

ナッジの戦略を考える

意思決定のプロセス、ボトルネック、ナッジ

必要な意思決定 ボトルネック 対策
YouTubeを見るヤバさの認識 危機感の欠如 金額に換算
他にすべきことは? 望ましい行動を知らない 一覧化と代替案の決定
スマホを開く 無意識の習慣化 ロック画面に警告文表示する
YouTubeアプリを開く 無制限に視聴できる 1日30分以上開けないようにする
動画を選ぶ 見るコンテンツを決めていない 登録したチャンネルを特定の曜日に視聴する、定期コンテンツの一覧化

設計したナッジのチェックをする。本書には、代表的な3つのひな形が紹介されている。

  • Nudges
  • EAST
  • MINDSPACE

どれも頭文字を取っており、最も項目が少ないEASTでチェックしてみる。

E EASY

・簡単か?

・情報が多すぎないか?

・手間がかからないか?

はい

はい

はい

A Attractive

・魅力的か?

・人の注目を集めるか?

・面白いか?

はい

いいえ

たぶん

S Social

・社会規範を利用しているか?

・多数派の行動を強調しているか?

・互換性に訴えかけているか?

はい

いいえ

いいえ

T Timely

・意思決定をするベストのタイミングか?

・フィードバックは速いか?

はい

はい

Social(社会性)は「いいえ」が多いが、解決したい問題が個人的なものなので気にする必要はないと考える。

ナレッジによる介入をする&変化を計測する

いよいよ、設計したナッジを実践する。ただやるだけでは意味がないので、効果測定も毎日やっていく。

この記事を書いた時点では、まだ実践する前なので、結果については後日別の記事で書きたいと思う。