Unlimitedに上機嫌

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ゲームは大苦戦!「エイチーム」の企業分析をやってみた

諸事情もあり、エイチームグループ(証券コード3662)の財務分析をしてみようと思う。

決算書の内容を見る前に、基本情報をチェックしておく。主に、3つの事業を行っている。「エンターテインメント事業」はゲーム、「ライフスタイルサポート事業」は比較サイト、「EC事業」は自転車販売と考えてよいだろう。いわゆるアフィリエイトが売上の7割を占め、3事業の中で唯一の黒字。他の2つは営業利益がマイナスとなっていて、特にゲーム事業の営業損失率は10%を超える。CMでも、子供の声で「エイチームグループ」と流れることがあるが、過去のコンテンツを見ても正直パッとしない。

自分がソシャゲを全くやらないというのもあるが、競馬でいえば『ウマ娘 プリティーダービー』、ファンタジーRPGと言えば『グランブルーファンタジー』など、約10倍以上の企業規模を持つサイバーエージェントのコンテンツを思い浮かべてしまう。

大株主を見てみよう。

出典:楽天証券

創業者の現社長が、1/4以上の株を保有する筆頭株主。2番目の「日本マスター信託口」を除けば、上位10位の株主が身内になる。従業員持株会も、全体の5%を保有しており株保有による従業員への利益分配を意識している。

肝心の株価推移を見てみる。

上場した2012年以降、全体的に右肩下がりを描く。2014年には一時5000円を記録しているが、直近の1年間は1,000円を超えることはない。利益の分配を目的とした、従業員への持ち株推進は素晴らしいが、長期的に下落する株を買い増ししても目的は達成できない気もする。

株価を見る限りでは、上場以来10年近く苦戦を強いられていることが分かった。財務面ではどうだろうか。決算書を見てみる。通期の数字を見るために、2022年9月9日発表の「2022年7月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」を覗く。BSの「資産合計」は、約147億円流動資産が7割以上を占め、「現金及び預金」「売掛金」「投資有価証券」の順で多い。

では、約150億円の資産の調達先を見てみよう。「純資産合計」は、約100億円。2021年度に比べて約10億円へっている。理由は、未払い金(流動負債)の増加と利益剰余金(純資産)の減少。約150億円の資産に対して、約50億円の負債。財務状況としては、健全だ。

続いて、事業面の数字をチェックしよう。直近2022年度の総売上は、約317億円。前期に比べてやや増えているが、営業利益は赤字に転落。約3億円の営業赤字を計上している。前期は7億円の営業黒字だったので、約10億円の減益だ。最終的には、約13億円の純損失を計上している。これを見た感じでは、「2022年度は本業がうまくいかず、資産もやや減らしてしまった一年間」ということになる。

事業成績を、セグメント情報で詳しく見てみよう。先ほど四季報で見たように、「ライフスタイルサポート事業」のみが黒字で、他の2つはそれぞれ約9億円と約8000万円の赤字を計上している。前期の2021年度は、全事業黒字で着地している。特にゲーム事業の赤字転落には、ヒットコンテンツが長らく出ていないことに終始する。決算書のコメントを見る限り、「ゲームは苦戦しているから、メタバース領域で再起を図ります」というような方針が見受けられる。2022年度のエンタメ事業の約10億円の赤字は、新事業への投資が膨らんだと考えられそうだ。

もう少し時間軸を伸ばして、事業ごとの成績を見てみよう。

エイチームグループのセグメント別売上高推移

エイチームグループのセグメント別利益額推移

「ライフスタイルサポート事業」は売上利益ともに右肩上がりで推移しているが、「エンターテインメント事業」は、2017年までを頂点に売上利益ともに減少している。2017年度は、前年にリリースした「「ヴァルキリーコネクト(Valkyrie Connect)」が好調に伸びた一年。言い換えれば、それから5年以上もヒット作が出てきていないことを意味していて、売上利益の推移もそれを投影している。

今後の経営方針を予想する

3つの事業を展開するスタイルは保持するだろう。収益の柱としては、アフィリエイトを中心とした「ライフスタイルサポート事業」。利益率10%以上を誇り、2023年度は売上高220億円、セグメント利益20億円ほどが見込まれる。ECでの自転車販売は、今期で7期目を迎える。認知度の向上にともなって、売上は右肩上がりを推移しているので、今期は何とかプラス着地したいところ。問題は、「エンターテインメント事業」。2022年度の決算短信にもあったが、アプリゲームからメタバースを利用したコンテンツに切り替える模様。すぐにモノになることはないだろうから、収益が望めるのは2025年度あたりだろうか。今期は赤字着地になることは事業予想でも明らかで、主軸のアフィリエイトでどれくらい赤字を相殺できるかにかかっていそうだ。

この先5年間の事業の行方は、「ライフスタイルサポート事業」に懸かっていると言えるだろう。なお、本事業で展開されているサービスと運用開始年度は以下の通り。

現在のサービス名 サービス開始(子会社化)年度
引越し侍 2006
ナビクル 2007
ハナユメ 2008
ラルーン 2010
Qiita 2017
ナビナビキャッシング 2014
Soldi
ナビナビ保険 2020
CAREER PICKS 2020
イーデス