Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

『バカな外交論 外交の基本』のおかげで、世界認識がちょっと進んだ

年末という季節柄か、周期的な要因か、とにかく今学びたい欲が旺盛だ。分かりやすく教えてくれる人がいるからというのも大きい。

今回は、外交。外交に持っていたイメージは、難しそう。なぜなら、身近ではないから。こうしたイメージは完全に覆された。高橋洋一さん、この度もありがとうございます。Unlimited対象であるうちに、彼の本を読み漁ること。これが今の自分に課せられた冬休みの宿題だと考えている。

さて、外交とはなんぞや。一言でいえば、「貿易」と「安全保障」について他の国と話し合うこと。貿易はなじみがあるけど、安全保障はニュースで聞くたびにメンドクサソウな印象を持つワード。そもそも、なぜ他の国と話し合うのか?理由は、自国の利益にするため。要は、自分たちの国を豊かにするため。豊かさには色々あるけど、資本主義世界ではまず物質的な豊かさが最も重要。国内だけで細々とするのもいいけど、海外で手に入るものが加わるとより生活は充実する。物質的な豊かさを実現するために、モノやサービスを売り買いするのが貿易。ただ、安全に貿易をするためには安全が確保されていなければいけない。最悪なのが、国同士で戦争すること。いつ攻めてくる相手とは商売したくない。反対に、争いになる事がない相手とは安心して貿易できる。つまり、どの国も豊かになるためには「貿易」と「安全保障」が重要だと考えている。その大事な2点を話し合うのが「外交」。

本書は、5章構成になっていて、外交のイロハが書かれているのは第1章「外交の基本ーー『どう考えても当たり前』のこと」。タイトルと同じ名前で、この章を読めば外交に関する基本知識がマスターできる。第1章の内容を自分なりの言葉で書いてみた。

  • 外交とは、「貿易」と「安全保障」について他国と話し合うこと。
  • 経済的な結びつきが強くなれば、軍事的な結びつきも強くなる。
  • 国(地域)同士の関係を見るときには、「経済」と「軍事」を1セットにした視点を持つ
  • 自由貿易がどの国にとってもベストな方法。
  • 自由貿易とは、規制や関税(輸入品にかけるハンデ)を取っ払って売り買いすること
  • 自由貿易で輸入する場合、安い外国製が入るので自国の生産者が損をする。しかし、消費者はより安くモノが手に入るので得をする。消費者が受ける得の方が、生産者が受ける損よりも必ず大きくなる。
  • 自由貿易で損をした生産者は、純粋な競争に負けたことになる。そうした人には富の再分配をすることで立ち直るチャンスを与える。
  • 貿易赤字と企業の赤字は全くの別物。
  • 貿易赤字は、輸出額よりも輸入額大きいことを指す。輸入してから国内で売られるので、「貿易赤字=国の赤字」とはならない。
  • 重商主義とは、輸出で得たお金をため込むことで国が栄える考え方。アダムスミスはこの考えを否定。根拠は、人を豊かにするのは輸出ではなく輸入にあるから。個人で考えても、貯金を生きがいにする人よりも消費(お金を使うこと)に生きがいを感じる人の方が多い。
  • 国が赤字かどうかを見るには、経常収支を見る。経常収入は、最終的な国の収支。
  • 日本は長年経常収支プラスを続けている。また、「経常収支が続く=国の危機」とは言えない。事実アメリカはずっと経常収支マイナスを続けている。
  • 共通通貨圏を作ってメリットがあるのは、「物理的な近さ」「同程度の経済力」「GDPの連動」の3つをクリアする必要がある。
  • 国際金融のトリレンマとは、「固定相場制」「金融政策の独立性」「資本移動の自由」の3つは同時にはできない法則。日本やアメリカは、固定相場制を放棄して残り2つを取っている。
  • 「民主的平和論」とは、民主主義の国同士は戦争が起こりにくいという考え。
  • 「集団的自衛」とは、同じ価値観を持つ者同士が集まって攻めにくい状況を作る事
  • 民主主義の目指すものは、国民の自由。反対の共産主義では、国民の土地や仕事などは国が決める。
  • 経済制裁とは、悪さをする国に間違いを気づかせること。身動きできない状態に追い込むとヤケを起こす危険性があるので、抜け道などを用意することも大事
  • 国連はワンピースの「世界政府」的な力はない。動き出すのに時間がかかる点や常任理事国の全会一致が必要な点など、強制力を持たないケースもある。
  • 国とは、政府と企業の集合体。話合って決めるのが政府で、実行するのが企業の役割。

分かりやすく説明してくれているので、ある箇所を除いてすんなりと理解できた。「ある箇所」というのは、こちらの一文。

まず民主主義という共通の価値観を持っているので、イデオロギー対立がないことが挙げられる。価値観が同じなので、相手の体制転覆や、みずからの体制維持をかけて戦う必要がないのだ。

出典:『バカな外交論 外交の基本 「どう考えても当たり前」のこと』(高橋洋一 著)

価値観やイデオロギー、体制維持など、抽象的な単語が並んだため思考がストップしてしまった。このままでは、「民主主義の国同士は戦争しないんだな~」ぐらいの理解で終わってしまう。もっと分かりやすい形で説明できないかなと思っていたら、この一文の後の方に、具体的なことが書かれている。

国内外で民主的プロセスを踏むことが当たり前となっているため、たとえば軍部が暴走して侵略戦争に突き進む、相手国との対話を無視して攻撃をしかける、といった極端な軍事行動が起こりにくい」

出典:『バカな外交論 外交の基本 「どう考えても当たり前」のこと』(高橋洋一 著)

なるほど、だいぶ具体的にイメージができる気がする。例えば、たった1人に全権力が集中していて、そいつが「戦争しよう」と言ったとする。反論をすれば殺されてしまうから周りの人たちは、仕方なく戦争の準備をすすめる。しかし、「戦争しても、ベネフィット(得)よりもコスト(損)の方が大きい。だからすべきではない」と考える人も中にはいる。だが、全てが1人の人間の選択によって決められるシステムが確立されている国では、そういった理屈は意味を持たない。こうしたシステムで動いているのが、独裁国家北朝鮮キューバ、ロシアなどがそれにあたる。

ごくわずかな例外を除いて、ほとんどの国は民主主義というシステムを採用している。民主主義の根本を担うのが、三権分立。人を罰する「司法」、法をつくる「立法」、実行する「行政」の3つに分かれ、権力が集中しないようにしている。このことから分かるのは、権力を分散させれば戦争には踏み切らないということ。日本やドイツ、イタリアなどが80年前に戦争を選択したのは、どの国も権力が1つに集中していたから。

高橋さんは、「自由貿易+戦争しない」のがどの国にとってもベストな方法だと説いている。現段階で戦争しそうな国がいくつかある。中国やロシア、北朝鮮などだ。これらの国が戦争を仕掛ける可能性があるのは、価値観が違うから。これらの国が民主化してくれれば、ドイツや日本のように戦争しなくなるだろうが、個人でもそうだが価値観を変えるのは難しい。ここで外交を考えるうえで重要な視点「貿易と安全保障をセットで」考えてみると、自由貿易をすれば戦争しなくなる可能性を提唱。自由貿易をして国が栄えれば、戦争するよりもどんどん貿易をした方が得だと気付く。自由に貿易するためには、相手国に安全だと思ってもらう必要がある。同じ価値観を持っていると示すことが最も安心してもらえるから民主化に踏み切る。こうして、民主主義国家に変わる、というシナリオ。ロシアが経済的に落ち目なのは分かるが、中国はむしろ経済的に豊かになり続けている気がする。中国がどれくらい「自由貿易しているのか」不明だが、制約を抱えたまま世界第2位にまで成長したなら、自由貿易の旨みには釣られない気もする。もし、自由貿易が出来てきたからここまで成長できたなら、自由に貿易できない状況を作れば良さそうだ。たまにニュースで聞く「中国包囲網」はそれに当たりそうな気がする。

ざっくりと、今の世界は「アメリカVS中国」のシンプルな構図であるのは確か。外交問題を考える上では、「この国は、アメリカと中国どっちの息がかかっているのか」という視点は持っておく必要がありそうだ。