Unlimitedに上機嫌

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韓国映画『SEOBOK/ソボク』の感想

毎週金曜日になると、無性に映画を見たくなる。これは「金曜ロードショー」によるもので、テレビのない生活を7年目になっても金曜夜に映画を見る習慣は絶えることがない。

今週は、韓国映画。PrimeVideoで「韓国映画」と検索すると、一番最初にでてくる作品だ。ジャンルとしては、SFスリラー。国の尻拭いをする企業で勤めていた男性と遺伝子組み換えによって生まれたクローン青年の物語。研究所で秘密裏に育てられたクローン人間を巡って、アメリカや韓国政府などが登場する。アクションシーンは少なめで、その代わりクローン少年の超能力が繰り返し炸裂する。弾丸の軌道を変更したり、棚を倒して相手を下敷きにしたり、マーベル作品に出てくる「なんでもアリな」チート級な能力だ。青年の超能力に注目が集まりがちだが、この作品の主題は「死」。作中では、死にまつわる哲学的なセリフが多数見られる。

人間は死があるから、生を定義できる

アメリカ人と思しき、軍人によるセリフ。クローン人間は、韓国政府による国家プロジェクトだった。研究は、民間の研究所に委託され、誕生したのちも国家のバックアップのもと大切に育てられていた。しかし、ある時クローン青年は外国人組織によって拉致されてしまう。直接的な説明はなかったが、彼らを雇ったのはアメリカ政府と考えて良い。方針変更は突然の武力行使によって伝えられる形となり、韓国政府はアメリカ政府の意向に従わざるを得ず、クローン人間の暗殺を実行する。

「技術的に、クローン人間を作り出すことは可能である」。世界的な遺伝子研究の権威である人が、テレビで言っていた。加えて、世界のどこかでクローン人間が誕生している可能性もあるとも言っていた。国際的にはクローン人間の生成が禁じられているが、それはなぜか。アメリカ人のセリフにヒントがありそうだ。人間は、死の存在を前提にすることで初めて生を認識することができる。自分が「生きている」と言えるためには、「死んでいない」つまり、死とはどういう状態で、その状態に当てはまらないという判断基準で考える必要がある。現代では、死は3つの特徴があるとされ、心停止、脳の機能停止などの基準で、人の生死を見極める。この作品に出てくるクローン人間は、不死の象徴。死ぬという概念を持たない少年は、生にしがみつこうとする隣にいる男性の気持ちが理解できない。

不死とは、最強の武器

主人公の元ボスが発したセリフに、「武器の本質は、恐怖。恐怖は、死を恐れる心理。不死であるということは、恐怖を持たないということ。つまり、死を克服した者は、最強の武器である」とある。もし、一国が不死という武器を手に入れたら、世界情勢は一変する。ミサイルや核をもっても相手は死なないとなれば、勝ち目がない。世界を征服したいなら、方法は2つ。他の国を殺す武力をつけるか、死なない武力をつけるか。21世紀現在では、前者による戦いが展開されている。しかし、技術的には可能である、クローン人間を軸とした戦い方に近い将来転換されるだろう。死なない武力を持つ国同士による戦いは、理論上終わらない。戦争は勝ち負けによる終わりがあるから、意味のあるもの。終わらないと分かっていれば、戦争をしようとする国がいなくなり、恒久的な平和が実現される。そんな夢物語の実現には、全ての国が同時に死なない武力を保有し始めるという非現実的な前提をクリアする必要がある。