Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

田中邦衛をよく知らないけど、隣にいたのは田中邦衛みたいな優しい父親だった

ネタがない時は、目に映った人を書くに限る。先ほどまでMが目印のファーストフード点に居た。その時となりに座っていたのは、中年男性。彼が来たときは集中していたので三角チョコパイを買った誰かが隣に来たという認識しかなかった。年間300回くらい出入りしているが、冬の風物詩となっている甘いトライアングルを頼んだことがない。甘いものは好きだし、ドロッとしたチョコが出てくるシーンを想像して食べてみたいと考えたことは一度ならずある。だが、値段と慣れ親しんだ美味しさを求めて、小腹が空いたときはアップルパイを選ぶ。先ほどはてなブログのトップで「月見で秋をグラコロで冬を」というタイトルの記事をかけ、自分は身近になりながら全然マックで四季を楽しんでいないなと反省した。

作業がひと段落した時、ふと隣に目をやる。田中邦衛そっくりのおじさん。正確には、田中邦衛の物まねをする人にそっくりな身なり。世代じゃないからと言うと、熱狂的なおじさま方に「あの作品は年齢に関係なく、日本人なら見ておくべき名作だ」とお叱りを受けそうだが、見たことがない。たぶん田中邦衛は俳優さんの名前だと思うが、『北の国から』の役名だと言われても自信がない程度の知識。だが、先ほどまで隣にいたおじさんは、ニット帽をかぶり作業服に身を包んだ、田中邦衛そっくりのおじさんだった。工事現場の作業着とはどこか違う感じな服だが、紫色の足袋を見るとやっぱり建設の作業員なのかなと思う。

そのおじさんは、熱心に何かを書いていた。鉛筆を異常に傾けて、いくつかの欄が印刷された白い紙にと向き合っている。3,4行の広さがあるフォーマットを見て、履歴書を書いているのだと推測した。その憶測は作業着姿と瞬時に結び付けられ、田中邦衛似のおじさんは「休職中の中年男性」であるという推理に至る。そう考え始めると、机に置かれたスーパーの袋も、バッグさえ買えない厳しい経済状況にあるという考えに飛躍する。人間の想像力とは、どこまでも自由でどこまでも都合がいいものだと思う。

どうやら全ての項目を書き終えたようで、袋から別の紙を取り出す。スーパー袋をバッグ代わりにしているのは事実だったが、今度の紙に書かれた質問は意外なものだった。ちらりと捉えただけだが、確かに「あなたのおすすめの絵本」という文字が確認できた。絵本という、求職中(だと思われる)のおじさんには似つかわしくない言葉。脳内でおじさんのプロファイルが更新される。

今回導き出した推理は、こうだ。おじさんには小さな子供がいる。あの紙は、子供が保育園でもらってきたもので、園児は「親御さんにおすすめの絵本を聞いてきましょう」という宿題を課せられたのだ。「絶対書いてね!」という我が子の言葉を思い出し、おじさんは求職活動を終わらせ子供の宿題に取り組み始めた。田中邦衛が演じたキャラは知らないが、彼も、彼に似たおじさんも、きっと頑固な昭和の男だと思う。無口で愛想のよい父親じゃないが、だれよりも子供のことを考えている優しい父親。大変な状況にありながら、子供との約束を果たそうとするカッコイイ男。そんな人の隣に、自分はいたんだと思えてならない。