Unlimitedに上機嫌

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話が長い人は、公然わいせつ行為の容疑者

電話に出ると、彼女の泣き声が聞こえてきた。

5分近く耳を傾けて分かったことは、

  • 姉に泣かされた
  • 今は近くに姉はいない
  • 慰めてもらえと言われ電話をしている

ということだった。

彼女は、現在24歳で姉は26歳だ。「姉に泣かされた」という言葉を、まさか24歳の女性の口から聞かされるとは思わず、シリアスな通話中思わず拭きそうになった。自分は、真面目な空気になればなるほど、無性にふざけたくなる癖がある。かなり悪質な「ヘキ」であることを自覚している。幸いにも、まだお葬式というものを経験したことがない。まさかとは思うが、誰かが亡くなった時にこのヘキが発動しないか不安に考えている。だが、そこは自分の良心に委ねるしかない。

彼女の姉は、高校卒業後アメリカの大学に行った帰国子女だ。現在は、東京の外資系ホテルでばりばり働いているらしい。2度ほど会ったことがあるが、アメリカナイズされた女の子という印象を受けた。何を話していても、いちいち外国語に聞こえるし、ボディランゲージも豊かで、相手を傷つけないを第一に考える妹とは対照的な性格である。姉の帰省最終日、2人でカラオケに行くことになったらしい。そこで、お互いの恋愛や将来について話した結果、2つ上の姉に泣かされた。これが事の顛末だ。

その電話ではちゃんと聞き取れなかったが、どうやらアイツ(自分)と結婚して大丈夫なのか?と聞かれていたらしい。その根拠としては、アイツと付き合い始めてからアンタ(彼女)は変わってしまった、アイツと一緒になったら遠くに行ってしまうような気がすると感じるらしい。彼女は「自分は毎日幸せなのに、大切な家族にそれが伝わらないのか」と考え、そしてそれを上手く伝えられず泣いてしまったとのこと。一度泣き始めた妹を見下ろし(実際見下ろしたかは不明)、「自分が幸せならそれでいいやん。もむ、気の済むまで泣け。私は外に出ているから、彼氏に慰めてもらえ」と、部屋を離れた。記憶を頼りに書いているが、まるでわからん。その時彼女が取り乱していたからなのか、1カ月前のことだからか、それとも彼女の姉が意味わからない人なのか、理由はいまだに謎である。

さて、ここからが本題である。彼女の姉が放った言葉で唯一共感できたことがある。「気の済むまで泣け」である。客観的に見ても、彼女はよく泣く人だと思う。成人女性の泣く頻度をちゃんと知らないが、彼女は俗にいう「泣き虫」に分類されると思う。頻度としては、2週間に1回。「それで多いとか言うなんて、女を分かっていない」というお叱りのコメントがあれば、是非一般値を教えていただきたい。話をすすめたいので、「泣き虫」のラインについては別の機会に再考しようと思う。

自分はあまり感情的にならない方だと自覚している。2週間に1度突然彼女が目の前で泣き出しても、「ハッ?意味わからんやけど」と口にすることはもちろん、頭によぎったりもしない。ただ「また来たな」と、そっと手を取ってあげるようにしている。すぐに感情的になる人間を軽蔑している節さえある。ちょっと肩が触れた程度で舌打ちしちゃう人やちょっと待たされただけで怒鳴る人を見ると、"Take it easy”と声をかけたくなる。

穏やかな性格。裏を返せば、人や物に対して客観的で、冷酷で、少し冷めたところがある性格。そんな自分が、たまに熱くなってしまうことがある。相手は彼女で、先ほどの「気の済むまで泣け」に繋がる。これまでの人生で泣かせた相手は、たぶん5人ぐらいだと思う。一番古い記憶では、弟。彼は2つ下で、昔からゲームやちょっとしたことでよく泣かせた。よくある兄妹ケンカ。続いて、母親も泣かせてしまったことが何度かある。ハッキリと覚えていない、というより良心が痛むので思い出したくない。あとの3人は交際相手。学生時代はカッコ悪い人間だったので、よく一方的に別れを切り出し泣かせてしまっていた。許されるなら、彼女たち1人1人に謝罪して回りたい。いまだに根を持たれ寝首をかこうとしている人がいたとしても仕方ないと思っている。

要領の得ない話をダラダラとされることに、どうしても我慢ならないことがある。彼女は、定期的に不安に見舞われてしまうらしい。1カ月に1回ペースで、ただただ「どうしよう、どうしよう」と相談を受ける。何が「どうしよう」なのか分からないので、ただただ聞くしかない時間がたまにある。普段は、嵐が過ぎ去るのを待てるのだが、そうもいかないのが人間の性。気づけば、「何がどうしようなん?」「これって何の時間?」「こっちの気持ちになったことある?」などを噴出させてしまうことがある。一度口を開けば後戻りはできない。彼女の目には涙が貯まり、表情が曇っていくのを認識しながらも止められない。なぜなら、だんだんと気持ちよくなっているからだ。小学校の行事における校長先生の話はどれもクソ長かった。当時は理解できなかったが、今なら分かる。校長先生は、気持ちよくて止められなかったんだ。前職のボスは話が長いことでみんなから敬遠されていた。辛口な先輩は、ボスの話を「オナニー」と呼んでいた。なんと秀逸なたとえだと感心した。彼女を泣かせてしまう饒舌な自分は、自慰行為をしているのだと思う。相手が感情的になればなるほど、行為がすすむ。そして、行為が終わった後、信じられない罪悪感に襲われる。

世の中を見渡すと、平然と自分のオナニーを見せつけてくる人がいる。話が長いと一度でも言われたことがある人は、注意が必要だ。書店には、「話し方は●●が9割」「人を引き付けるトーク術」などの本が並ぶ。だが、ちょっと口下手くらいが良いのかもしれない。