『スタートライン』著:喜多川泰|銭湯で出会ったカッコいい大人
作品情報
作者 |
喜多川秦 |
ジャンル | 小説・人間ドラマ |
ページ数 |
254 (読み終わるまでの平均:2時間16分) |
キーワード | カッコイイ大人・教育・夢 |
あらすじ
「今の自分にできることで、自分の価値を判断しちゃいかん。5年後の自分の可能性を舐めるなよ」
将来に漠として不安を抱えながらも、やりたいこと、やるべきことを見つけられないまま勉学に勤しむ高校3年生の大祐。
東京からの転校生、真苗に、一瞬のうちに心を奪われた大祐は、彼女に誘われて、大きな夢を実現させている人たちの講演を聴くうちに、人生を真剣に考えるようになる。
そして、ある日、ついに大祐は真苗に告白することを決意するが……。
多感な高校生のほのかな恋愛ストーリーのなかに、ちりばめられた著者の熱い想いが、読者に、夢に向かって一歩を踏み出すこと、計画ではなく情熱をもって行動し続ける勇気を与えずにはいない傑作自己啓発小説。出典:Amazon
象徴的な一節
本気でやれば何だって面白い。そして、本気でやっているものの中にしか、夢は湧いてこない。
本書と自分
- なぜ読もうと思ったか・・・
- 喜多川秦さんの小説だから
- なにを得たか・・・
- カッコいい大人との思い出
- 好きな一節・・・
「俺の夢は、主要五教科に<人生>を入れて、六教科にすることなんだよ」
個人的な感想
岩本さん
人生で出会った一番カッコいい大人
初めて出会ったぼくにご飯とホテルに泊めてくれた。
大学四年の時に行った一人旅。
行き先は和歌山。
貧乏旅行と称して、外で寝泊まりしようと思ってた。
岩者さんとは新宮駅の近くの銭湯で会った。
向こうから話しかけてくれた。
銭湯を出る時、ごく自然に「飯まだ?」と誘ってくれた。
店まで車で送ってくれた上に、
「隣の店にいるから、食べ終わったら呼びにきて」とだけ言い残して、ぼくを寿司屋に入らせた。
その言葉の意味はよく分からなかったので、
自分で払うつもりでお寿司を食べた。
一応会計を済ます前に、隣のスナックを覗いた。
岩本さんはそこにいた。
「美味かったか?」とだけ言うと、立ち上がって寿司屋に向かった。
ぼくも後に続いて入ると、岩本さんは会計をしようとしていた。
「いや、それは…」という僕を尻目に、ごく自然と会計を済ませた。
あまりの一瞬のことで、小刻みにお礼を繰り返す。
「よし戻るか」と言って、僕たちはスナックに行った。
カラオケが流れる中、岩本さんとはプライベートな話をした。
岩本さんが奈良県で建設業の会社を経営していること、あの銭湯には毎晩車で来ていること、建設の仕事をする前はデパートで働いていたことなどを話してくれた。
岩本さんの話はどれも楽しかった。
「こういう人を成功者って言うんだろうな」と思いながら、魅了されていた。
1時間ぐらい経ってから、「今日はどこに泊まるの?」と聞かれた。
「海辺で野宿しようと思います」と答えると、「それはダメだよ」と言った。
岩者さんは、偶然その場にいたホテルを経営している社長さんに声をかけた。
「これであの子を泊めてくれないですか?」とその人にお金を渡した。
その人は自分のホテルに連絡をし、部屋を押さえてくれた。
またも、自分はブツブツと「それは…」と「ありがとうございます」を繰り返しながら、カッコいい大人たちのやり取りを眺めていた。
今でもあの日の出来事は夢だったんじゃないかと思う。
でも、次の日目覚めると確かにそこはホテルの一室だった。
枕元には、岩本さんにもらった名刺があった。
あれからお歳暮を送ったりしたが、返事はない。
いや、それで良いなと思った。
もう二度と会えないかもしれないところにいる方が良い。
どこにいても、あのカッコいい大人は自分の中に生き続ける。
いつか自分もあんな風になりたい。
そして、いつかあの銭湯で岩本さんと再会したい。
世間の評価
Amazon | 4.4/5(430) |
honto | 4.3/5(80) |
楽天ブックス | 4.2/5(77) |
個人的な評価
総合 | ★★★ |
読みやすさ | ★★★★ |
読み応え | ★★★ |
もう一度読みたい度 | ★★ |