『森崎書店の日々』著:八木沢里志|古本屋あのの匂いに包まれて、あったかい気持ちになった
こんな人に読んでもらいたい
- 本が好き
- 古本屋が好き
作品情報
作者 |
八木沢里志 |
ジャンル | 小説・人間ドラマ |
ページ数 |
165 (読み終わるまでの平均:) |
キーワード | 古本屋・夢・愛・居場所 |
あらすじ
本の街・神保町を舞台にした青春恋愛映画の原作小説。
交際を始めて1年になる恋人から、突然、「他の女性と結婚することになった」と告げられた貴子は、深く傷ついて、ただ泣き暮らす毎日を送ることになった。職場恋愛だったために会社も辞めることになった貴子は、恋人と仕事をいっぺんに失うことに。そんなとき叔父のサトルから貴子に電話がかかる。叔父は40代、奥さんの桃子さんに家出され、ひとりで神保町で「森崎書店」という古書店を経営していた。飄々としてつかみどころがなく、親類の間では変人として通っていたサトル叔父、小さい頃は貴子も遊んでもらったこともあったものの、ここ数年は交流はなかった。その叔父からの連絡は、「店に住んで、仕事を手伝って欲しい」というものだった。誰かの救いを求めていた貴子は、叔父の申し出を受け入れて、本の街のど真ん中に住むことになった――。出典:Amazon
本書と自分
- なぜ読もうと思ったか・・・
- タイトルからあったかい小説だと思ったから
- なにを得たか・・・
- 古本屋が好きであることに気づいた
- 好きな一節・・・
個人的な感想
本を読んで生きていければ
読書家になって、かれこれ7年ぐらいが経つ。
本を読むようになったきっかけは、母から借りた『獣な奏者』
それまで20年近く苦しんでいた活字アレルギーは、たった一冊の小説で完治した。
当時は、別の大学への編入を決めた時期で英語、読書、バイト三昧だった。
本を読むことが全てだった当時の自分は、年間○冊読めていることが最大のステータスで、本を読んでいるかいないかで人の価値が決まると本気で信じていた。
まさに、こじらせインテリ学生の典型。
そうした偏見も、本を読む人が少ない現実を知るとともに修正されていった。
当時も今も、本を読んで暮らすことができるのが夢。
もっと言うなら、京都でのんびり畑をしたり本を読んだりして暮らしたい。
無職の今も、それと似た生活をさせてもらっているのだが。
やはり、自力ではないというか、先の不安がある今は違う気がする。
本の虫になっていた大学時代を過ごしたのが京都だったこともあって、古本屋巡りもしていた。
一乗寺、百万遍、寺町。
ケチりたくて自転車でどこへでも行ったお陰で、京都の土地勘も同時に鍛えられた。
中に入ると、古本屋でしか出せない匂いが包んでくれる。
そして、店内は絶妙な均衡で保たれていた。
決まって店番をしているのは、おじいちゃんおばあちゃん。
地震が起きて、崩れ落ちる想像をしてしまうのは自分だけではないんだな、ということはこの一節で確認できた。
「会計するための小さなカウンターの奥も、本でぎっしり。大地震でも起きたら、そのすべてがいっせいに雪崩を起こし、下敷きにされてしまうことは疑いようがない。」
ついでに僕はこんな失礼な妄想もしていた。
「この人たちはいつか本で窒息死するだろうな。でも、きっとそれを幸せだと逝くんだろうな」と。
もう久しくあの匂いを嗅いでいない。
「すいません、お金がないので100円の本しか買えません」という、古本屋でしか味わえない居た堪れなさも暫く味わっていない。
すっかりコスパで本を語るようになってしまった自分に、この本は"あの頃"を思い出させてくれた。
秋になる。
読書の季節だ。
また自転車で古本屋巡ってみようかな。
世間の評価
Amazon | 4.3/5(345) |
honto | 3.7/5(197) |
楽天ブックス | 3.7/5(197) |
個人的な評価
総合 | ★★★★ |
読みやすさ | ★★★★ |
読み応え | ★★★ |
もう一度読みたい度 | ★★★ |