Unlimitedに上機嫌

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【ネタバレ注意】『アバター2』の魅力は、やっぱり”あの”映像体験だった

 半年前から楽しみにしていた『アバター2 ウェイオブウォーター』を見に行ってきた。2D字幕にて。本の紹介を名乗っているが、まだガッツリ解説している記事も少ないので書いていこうと思う。

この記事は、『アバター2』のネタバレを含みます。

 

総評

みんなが知りたいであろう、面白かったのか否か。100点を満点として以下の採点基準で考えるとすると、

  • 90点以上「絶対見に行くべき」
  • 80点以上90点未満「結構面白い」
  • 70点以上80点未満「見に行って損はない」
  • 70点未満「サブスクを待つべき」

自己採点では83点。前作をリピートして見るぐらい好きで上がり切ったハードルを優に超えるようなものではなかった。だが、キャッチコピーにある「人類史上最高の映像体験」は過言ではなく、あの映像美は大スクリーンで見ないと勿体ない。

作品評価の内訳は、こんな感じ。

総合

83/100
映像 10/10
ドラマ 6/10
音楽 9/10
演出 9/10
世界観 9/10
社会性 9/10
オリジナリティ 7/10
脚本 8/10
キャラクター 7/10
自作への期待 9/10

特に、高評価・低評価をつけた「映像」「社会的メッセージ」「ドラマ」について、詳しく書いていこうと思う。

圧倒的な映像美

アバターの魅力は、なんといても映像美。今回も、美しい自然に囲まれた「パンドラ」が舞台。前半30分ほどは、1作目のおさらいみたいなパート。ジェイクが走り回った森を、今度はジェイクの子どもたちが成長する舞台として映し出される。絆をつないで空を自由に飛ぶ怪鳥やくらげのようにプカプカと浮かぶ精霊たちなど、前作でも見られた森の生物たちが見られる。前作を知っている人は「アバターの世界観ってこんなんだった!」となるし、初めて見る人は「なにこの世界観!デザインといい設定といい素晴らしい!」となるところ。

宿敵から逃れるために、ジェイクたちは森を出て海に移住する。そこでは、前作では見られなかった海の世界が美しく描き出される。海での移動にはかかせないとびうおのような魚や水中で息をすることができるイソギンチャクみたいな花、海の民と強い絆で繋がっているクジラなど、アバター独特のデザインされた生物たちとの出会いがある。映像的な美しさはは言語化できないので、劇場に見に行ってもらうしかない。元も子もないが、アバターは語るよりも感じる系の作品であることを改めて伝えたい。(と言いながらも、ネタバレは続けますが。)

捕鯨問題を痛烈に描く

前作の森林伐採、生態系の破壊などの社会的メッセージが内包されていた。今回は海を舞台にしているということで、ある生物の社会問題にフォーカスされていた。物語の重要なキーともなっているクジラだ。作中では「トゥルクン」と呼ばれ、海の民とは魂の兄妹的な絆で結びついている。

物語の構図としては、前回同様「アバターVS人間」だ。前回の人間側が欲していたのは、パンドラに生きる全てと通信する役割を担う「魂の樹」。筋肉マッチョな大佐を筆頭に、森に総攻撃をしかけ不思議なネットワークを手に入れようとしていた。

今回の人類のターゲットは、クジラ(トゥルクン)の脳髄にある金色の液体。正式な名前は忘れたが、たった小瓶1本で8000万ドル(約100億円)の価値があると言及される超希少資源。その液には老化を止める作用があるとされ、たった何CCを手に入れるために様々な武具や装置を搭載した連中が登場する。前作に引き続き、人類サイドの代表は大佐。彼と中心になってタッグを組むのは、軍ではなく捕鯨を生業とする民間組織。

クジラを捕える工程がかなりリアルに描かれているのが特徴。とにかくバンバン火力で森を制圧した前作と違い、GPSを打ち込み、ターゲットを群れから孤立させ、複数の道具で絶命させる。以前NHKBSで捕鯨のドキュメントを見たことがあるが、工程はその時見たものと酷似していた。ファンタジーでありながら、あそこだけ現実的なステップを経るので違和感を覚える。違和感は観客の最も注意が集まるポイントであり、実際の海でもクジラたちはこんな風に乱獲されているんだということを見てほしかったのだと考察する。銛を打ち込まれるたびに上がる悲鳴に似た鳴き声、もの言いたげなな顔をする海洋学者、そして絶命する母クジラの周りを泳ぐ子クジラ。個人的には、あのシーンが唯一、今作で目を覆いたくなったところだった。

多様なキャラクターが持つドラマ

前作との決定的な違いは、キャラクターの多さ。1作目は、ジェイクの物語であった。人間のスパイとしてナヴィの世界に潜入する。愛する人アバター)との出会いやパンドラの美しさに魅せられて、ナヴィの側につき人間と戦う。ストーリーは、常にジェイクの視点で描かれ、彼に起こるドラマが感情の動くポイントだった。

今作は、家族の物語。作中では、"stuck together"(団結)が繰り返される。アバターを3部作以上続くシリーズと見なすと、2作目は「親:子=1:1」の比率でストーリー展開される。前半はジェイクたち親が抱える葛藤を描き、後半はロアクたち子どものアイデンティティに関する葛藤を描く。その構図は、敵側の大佐たちにも言える。前半は大佐が蘇った過去を描き、後半は彼の子供である「スパイダー」を中心に描く。

今作をざっくり言えば、「サリー親子VS大佐親子」。スパイダーは、最後までどちらに着くかを決めあぐねていたが、ラストのシーンではサリー親子側とともにすることを決断した。大佐はまだ生き残っているので、この構図は次回作以降も引き継がれることは確定的。

ドラマ要素を低評価した理由は、シンプル。敵側の動機が弱い。繰り返しになるが、敵側と言うのは大佐。彼は、前作でネイティリの矢によって殺された。そして、今回記憶と魂のデータによって復活した。彼の行動原理は、サリー一家への復讐。そのひねりの無さが、ガッカリなポイント。言ってしまえば、「戦いました。殺されました。殺した相手を憎んでいます」というチープなロジック。大佐の知らない惨い仕打ちをされたとか、大佐以外にジェイクたちに恨みを持っている奴がいたとか、そういうサプライズ的要素を期待してしまった。

先ほども言ったが、アバターは映像美を楽しむ作品。複雑な人間関係やドラマは、ビジュアルが持つシンプルな魅力をかすませる要因とならなくもない。見終わってすぐの今は、ドラマ要素をマイナスとしたが、時間が経てばやっぱりシンプルなストーリーラインで良かったと評価を改めるかもしれない。

次回への期待

次回作は、確実に制作される。1作目と2作目には、10年以上の時間を要した。エンドロールを見ても分かるが、信じられない人員と時間をかけて作られている。やや低めの評価をしたが、映像体験という観点で言えば第2作を待った13年間、アバターが与えてくれた感動を与えてくれた作品はなかった。それほどにアバターという作品は特別でかけがえのない存在。『ハンターハンター』同様、ただただ続編の公開発表を待つのみという状況がこの先5年続くと思われる。待てる。ファンができることは待つことだけなのだから。そして、ジェームズキャメロンと富樫の存命をただただ祈る。