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プライム会員なら”無料”で見れる!映画『涙するまで、生きる』

生と死」を考えさせられる物語——映画『涙するまで、生きる』 | Gaku-yomu

歳をとるにつれてより男を上げる、ヴィゴ・モーテンセン。彼を見たくて、プライム対象の映画を漁った。そしたら、こちらの作品が見つかった。

涙するまで、生きる(字幕版)

涙するまで、生きる(字幕版)

  • ヴィゴ・モーテンセン                                                      レダ・カテブ
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『涙するまで、生きる』の基本情報

『涙するまで、生きる』の評価

点数 80/100点
オススメ度 ★★★★★
ストーリー ★★★
演技 ★★★★★
映像 ★★★★
演出 ★★★★
設定 ★★★★

『涙するまで、生きる』感想・レビュー

『涙するまで、生きる』について、感想・レビューです。※ネタバレを含みます

アルジェリアって、どんな国?

作品の舞台となっているのは、アフリカにあるアルジェリアという国。日本語で「アルジェリア」と検索して見ると、以下のような関連キーワードが表示される。

治安の次に、フランスが表示されるぐらい、アルジェリアと言えばフランスを想起する人が多いことが伺える。この作品で描かれているのは、1954年のアルジェリア。その頃のアルジェリアでは、100年以上続くフランスからの支配から解放しようと独立運動が活発だった時期。最終的に、1962年に独立を果たすことになり、54年のアルジェリアは作中で描写されるように、フランスとアルジェリアバチバチやっていた時代。

国民はイスラム教(スンニ派)を信仰しているため、公用語アラビア語。全体の25%は原住民であるベルベル語を話すベルベル人だそう。約130年フランスの占領下にあったこともあり、国民の多くはフランス語を話す。作中の黒人・モハメドも、フランス人に雇われていた経緯もあり、ある程度フランス語を話すことができる設定になっている。

2022年にIMFが発表した世界のGDPランキングによると、アルジェリアは世界で56番目。アフリカの中では、ナイジェリア、エジプト、南アフリカに次ぐ4番目の位置。主要産業は、石油・天然ガス関連産業だそうで、2015年時点の原油埋蔵量ランキングによると、世界で10番目のエネルギー大国。輸出相手としては、イタリア・フランス・トルコ・スペイン・オランダのヨーロッパが上位5カ国を占める。輸入トップ5カ国は、中国・フランス・ドイツ・イタリア・スペインで、半製品、資本財、消費財、食料品などを主に輸入している。輸出輸入ともに、フランス・イタリア・スペインと密接な関係で、地理的・歴史的に関係の深いことが背景にあると考えられる。

出典:旅行のとも、ZenTech

 

雨は降るのか?

ダリュとモハメドが、雨に打たれるシーンがある。雨宿りをしようと扉を開けた家は、屋根がない廃屋で、二人が顔を合わせて笑うというシーンは印象的なシーンの一つだ。アルジェリアはアフリカで、アフリカと言えば砂漠を真っ先に思い浮かべる。実際、二人が歩く道は砂漠に近い岩石地帯で、雨が降るような場所だとは思えない。

出典:WeatherSpark

上のデータによると、アルジェリアは冬季には50ミリ近く雨が降る。年間の降水量は400ミリ強で、日本で最も降水量が少ない「北海道北見市常呂」(700ミリ)の半分程度。暖炉を焚いていた描写から、二人が過ごしていたのは気温が最も低い12月~1月だと思われる。つまり、映画にあった、冬に雨が降る描写は、現実のアルジェリアを反映したものだと言える。

小麦は、採れるのか?

作中では、主人公のダリュが生徒たちに小麦の配給を行うシーンがある。多少雨が降るとは言え、アルジェリアでは小麦はとれるのだろうか。「アフリカ=砂漠=作物は育たない」という固定観念を持つ自分は、アルジェリア人が小麦を食べているイメージがつかない。

出典:アルジェリア農林水産業概況

2022年に農林水産省が更新したデータによると、アルジェリアでは年間311万トンの小麦が生産されている。これは、日本の3倍以上で国内の自給率は50%近くだと推定される。穀物全体では、33%の自給率だそうで、アフリカ諸国の中ではかなり高い水準。作中であるように、田舎の地域では拠点となる場所で、小麦やスイカなどの配給が行われていると考えられる。

この作品は、何を伝えたかったのか?

この作品のテーマは、掟。主人公の2人は、それぞれ違う掟に縛られている。ダリュは黒人を支配する掟に縛られ、モハメドは村が定める掟に縛られる。そして、二人はそれぞれの掟を破る。ダリュは掟に背き黒人であるダリュを解放し、ダリュは村の掟に背きコミュニティを離れた。生き別れた二人がその後どのような道をたどったのかは想像に任せるだけだが、タイトルにある「涙するまで、生きる」には、掟に背いてでも生き抜く二人の姿を表しているのではないだろうか。

日本人である自分たちも、時間やお金という掟に縛られて生きている。遅刻することや借金を踏み倒すことは、作中のモハメドが犯した殺人と同じように罪深きものとされることも度々ある。富の拡大と合理化を追求する現代社会で、時間とお金を中心とした掟に抗って生きることは大変だ。しかし、そうした世の中に窮屈さを感じているのも事実で、休日キャンプに繰り出す人や超自然主義を謳う新興宗教にのめりこむ人が絶えないのは、そういった実情を反映していると言えるだろう。掟に抗うことは、社会的な死をも覚悟する大変なこと。しかし、そうすることで、作中の二人のような、使命感や充足感に充ちた人生を送ることもできるのかもしれない。

2014年公開、ダヴィド・オールホッフェン監督作品。

1954年フランスからの独立運動が高まるアルジェリア。元軍人の教師・ダリュのもとに、殺人の容疑をかけられたアラブ人のモハメドが連行されてくる。裁判にかけるため、山を越えた町にモハメドを送り届けるよう憲兵に命じられ、ダリュはやむを得ずモハメドを連れて町へ向かう。復讐のためモハメドの命を狙う者たちの襲撃、反乱軍の争いに巻き込まれ、共に危険を乗り越える内に、二人の間には友情が芽生え始めるが……。

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『涙するまで、生きる』が好きな人に、おすすめの映画3作品

グリーンブック(プライム会員なら見放題)

2018年公開、アカデミー賞3部門(作品賞、助演男優賞脚本賞)受賞作品。

1962年、アメリカ。ニューヨークでクラブの用心棒を務めていたイタリア系男のトニー・リップ。彼は、天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーが南部で行う演奏ツアーに運転手兼ボディガードとして雇われることになる。

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最強のふたり(プライムビデオでレンタル可能)

2011年公開、オマール・シー主演、第37回セザール賞(フランス版アカデミー賞)主演男優賞作品。

事故で全身麻痺となり、車いす生活を送る富豪フィリップと、図らずして介護役に抜擢されたスラム出身の黒人青年ドリス。共通点はゼロ。高級住宅地とスラム、ショパンクール&ザ・ギャング、超高級スーツとスウェット、洗練された会話と下ネタ、車いすとソウル・ミュージックに乗ってバンプする身体―。二人の世界は衝突し続けるが、やがて互いを受け入れ、とんでもなくユーモアに富んだ最強の友情が生まれていく。

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amzn.to

ブラインドスポッティング(プライム会員なら見放題)

2018年公開、ラファエル・カザル主演、インディペンデント・スピリット賞(主演男優賞)受賞作品。

舞台は、ニュージーランドオークランド。黒人のコリンと白人で問題児のマイルズは、一緒に育った大親友。コリンは1年間の保護観察期間の終了が目前で、残りの3日間を何としてでも無事に乗り切らねばならなかった。しかし、相棒のマイルズにコリンのそんな事情を気遣うそぶりは微塵も見られなかった。 

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