Unlimitedに上機嫌

「お金はかけずに学びたい」をコンセプトに、年間300冊を読む無職がPrimeReading対象本を紹介するブログです。

Unlimited本『チョウはなぜ飛ぶか』昆虫の生態は、マーケティングだ。

昆虫学って、面白い。

1分で分かる「この本に書かれていること」

  • 飛ぶルートが決まっているチョウとそうでないチョウを分けるのは、「何を食べるか」
  • メスとオスを分けるのは、羽の色と模様
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第1章 チョウを2種類に分かれる

チョウは、飛び方に2種類に分けられる。決まったルートを飛ぶ種と自由なルートを飛ぶ種。アゲハチョウは前者、モンシロチョウは後者。アゲハチョウなどが飛ぶ決まったルートを、本書では「チョウ道」と呼ぶ。チョウ道を持つ種類(決まったルートを飛ぶチョウ)は木になる植物を食べ、チョウ道を持たない種類は草になる植物を食べる。チョウが飛ぶ高さは、50~100センチ。彼らにとって、木は上にあり、草は下にある。これは、人間と同じ感覚。視界の下に食料がある場合、無作為に飛んでお目当ての植物を見つけるのが最も効率的。反対に、木に向かう種類は木と木を結ぶルートを飛ぶのが効率的。アゲハチョウは、木の生えない開けた道を通ることはない。木が生えていないところを飛んでも目的を果たすことができないからだ。「何を食べるか」によって、「どう飛ぶか」が決まるということだ。

チョウの飛び方をビジネス利用できないか?

本書を読んでいる時に思ったのが、マーケティングに似ているなということ。スーパーやコンビニでは、商品の置き場所によって大きく売上が変わると聞く。スナックやグミに挟まれた通路をレジ前に設けることで、「ついでに買っておこう」という購買意欲を促すことができる。著者が行った「チョウ道」の研究を利用すれば、消費者の行動を予測し売上UPに繋げることができそうだと感じた。以下の手順で、著者は「チョウ道」の研究を進めた。

  1. チョウの行動を観察
  2. チョウが通った経路を記録
  3. 経路を決める仮説を立てる
  4. 1~3を繰り返す

もし、ECサイトの売上拡大という目的に置き換えるなら、以下の手順を実行すれば良さそうだ。

  1. サイト訪問者の行動を観察
  2. 買った人/買わなかった人の経路を記録
  3. 買った/買わなかった仮説を立てる
  4. 1~3を繰り返す

マーケティングの基本である、ユーザー分析と合致した。対象がチョウから人間に変わっただけで、科学からビジネスに変換した。

第2章 昆虫はどうやってメスを見分けるのか?

なぜ、昆虫は同種の異性とだけ交尾するのか。人間のように、自分の身体を鏡で確認することもできないし、大自然の中で見つけられるほど大きくない。モンシロチョウの場合、紫外線に反射した色で識別している。昆虫は、紫外線を見ることがことができる。メスは白色に反射し、オスはほとんど反射しない。アゲハチョウの場合も、目で確認することに違いはない。しかし、アゲハチョウの方がより複雑で、羽の色と模様でメスとオスを見分ける。黒と黄色の縞模様以外の羽には、オスは見向きもしない。自然界を生き抜くうえで、黄色は目立ちすぎる。しかし、真っ黒であるとオスに見つけてもらいずらくなる。そこで落ち着いたのが、黒と黄色の縞模様。

「カギ刺激」をビジネス利用できないか?

アゲハチョウのオスは、羽の色と模様によってメスを判別し近づく。言い換えるなら、羽の色と模様を真似れば、オスを引き寄せることが可能ということ。また、春になると海から上がってくる魚「イトヨ」は、自分の縄張りに入った外敵を色で判断する。同種のオスは腹が赤くなるため、腹の位置が赤いものが刺激になり行動を起こす。このように、生物が行動を引き起こす要因を「カギ刺激」と呼ぶ。

人間も生物の一種であるから、カギ刺激があるはずだ。ブログのクリック率を上げたいのなら、カギ刺激を意識したタイトルをつければ良さそうだ。はてなブログでも、Google検索でも、タイトルのフォントは統一なので、色の変更や文字の大きさを変えるなどはできない。つまり、文字のみで刺激を伝える必要があるということだ。Googleでは全角29文字、はてなブログでは全角32文字まで表示されるようだ。カギ刺激は、全体ではなく、その一部の特徴が行動を引き起こす。もし、カギ刺激をWEBマーケティングに活用できるとするなら、タイトル全体のクオリティはどうでもよく、一部を目立たせるかが重要になる。

考えるべきは、「30文字の文字列の中で、最も目立つ部分ははどんな特徴を持っているか」ということ。「はてなブックマーク」にランクインしている記事の中から、タイトルの一部が目立っているものを抜粋してみた。(太字は、目立っている部分)

  • 世界のベーコンガチ勢、日本のベーコンを見て困惑「なにこれ…」
  • たまご「がけ」ご飯だろうが!
  • 屋内もマスク不要案浮上 コロナ「5類」移行で政府
  • シャケ向けマッチングアプリ「ベアーズ」が客を食い物にしていると話題に
  • その物忘れスマホ認知症かも  30~50代で急増中
  • 「おどるポンポコリン」の中身のなさは異常
  • 追記あり女版ショタコンの生きづらさ
  • マジではてブ民の言う「リモコンを探す」ってなに?
  • いわゆる「萌え絵」攻撃は差別ヘイトスピーチであること

1タイトル1秒かけずに見た結果、「文字列」が最も目立っているという結果になった。普通は「」がついていないから当然の結果だが、「」や<>をタイトルに使うのは有効であると言えそうだ。また、記号の中に入れるのは短いカタカナが最も効果的。目安としては5文字以内に収めると、より記号で引っ張ってきた意味が最大限に発揮される気がする。ただこれは形式の話で、目立つからクリックされるとは限らない。思わず中身を開けたいと思わせるためには、「たまごがけご飯だろうが!」のように分かりやすい断定するのが良いと思われる。「形式で注目を集めて、断定で押し切る」というのが、クリックされやすいタイトルのつけ方となるだろうか。

第3章 色とにおいの意味

前章では、アゲハチョウのオスは翅の色と模様でメスを見つけることが分かった。正確には「メスらしきもの」を見つけることが分かった。色による識別ではまだ不完全で、メスと思しきものを見つけた時は必ず触れる。その結果、メスだと判断すれば交尾を行い、そうでないものは無視をする。つまり、メスの断定には触れるというステップを必ず経るのだ。昆虫は触角で匂いを感じ取り、それを接触化学覚と呼ぶ。人間の嗅覚と違うのは、触れたものだけを嗅ぎ取ることができるので、周りの匂いと混ざって別種のメスと間違って交尾するというミスが起こらない。

オスがメスを特定する方法は解明しているが、メスが卵を産み付ける植物を特定する方法は明らかになっていない。つまり、第3章は研究途中の内容が含まれているということだ。これは、著者の狙いでもある。

そうではなくて、ぼくはまだ研究のとちゅうにあることについて書きたかった。いろんな失敗や、ばかばかしいまちがいを書きたかった。研究というものが、けっして本に書いてあるように、すっきりとした理論のうえになりたったすばらしいものではなくて、いかにばかくさい、くだらないものであるかを書きたかったのだ。」

出典:『チョウはなぜ飛ぶか (岩波少年文庫)』日高 敏隆 著

既に分かっていることをただ説明するのは、つまらない。このスタンスが、日高敏隆らいさなのだろうと思う。ネットで簡単に調べただけでも、著者は超一流の研究者だと分かった。天皇から贈られる勲章も受け取る資格があるような人らしい。日高敏隆の名前は、現代文のときに何度も目にした。当時は、てっきり受験用の文章を書く人だと考えていたので、昆虫学の研究者だと知ってちょっと驚いた。この本は1970年代に書かれた本らしいが、全く古さを感じない。そして何より、研究者が書いたとは思えない。ひらがなを多用していることもあるが、これを書いたのは昆虫を愛する少年だと言われても不思議はない。いや、日高敏隆という人物は、肩書は学者でも、心は昆虫が大好きな少年のままなんだと思う。表現は稚拙だが、彼は本当にカッコイイと思う。この本を読むまでは受験用の作家だと思っていたが、訂正したい。自分は、日高敏隆のように、少年心を持ち続けた人間でありたい。